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法話

思いが仕事をする 1 思いによってつくられる

今月から「思いが仕事をする」というテーマでお話を致します。
このお話は平成20年に、ある職場で働く人たちに、元気の出るお話を、
ということでお話したものです。少し書きなおしながら、考えていきます。

思いが99パーセント

生きていくのは厳しいことで、
私がこのお話をしても、明日から給料が上がるわけではありません。

でも、どのような思いでいたならば、
やがて必ず、お金にも困らず、豊かな生活ができるか、
心も物質的にも豊かになれるか。そんなお話をしてみたいと思います。

私たちはみんな、見える世界に住んでいます。

今お話しているこの部屋には、天井があって壁があって、
夜ですから電気が付いて、黒板もあります。

皆さんの前には講師である私がいて、坊さんの姿をしているのが見えます。
私にとっては、聞いているみなさんがいて、それぞれ違った服を着ているのが見え、
みんな見える世界です。

見える世界が100パーセントで、
この形の世界を互いが認識し合い、今ここで私がお話をしています。

そう考えると、見える世界がすべてであると思えてきます。

そうではなくて思っていること、思いや考えていることが99パーセントであって、
残りの1パーセントが、この形のある見える世界である。そんな考え方もあります。

仏教の教えの原点に、

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。

『真理のことば 感興のことば』中村元訳・岩波文庫

とあります。

これは有名な『法句経』という経典を中村元(はじめ)が訳したものです。
ここの心というのを、「思い」に変えると、次のようになります。

ものごとは思いにもとづき、思いを主とし、思いによってつくり出される。
こうなります。思いを「考え」に変えても同じです。

苦しみについて

苦しみについて考えてみると、
苦しみが外部から、あるいは他人からくるものと思っている人もいます。
あるいはそうではなくて、自分の思いが苦しみを作っているということもあるわけです。

たとえばここに100円があります。

それに幸せを感じる人と、幸せを感じることなく何とも思わない人、
あるいは100円に苦しみを抱く人もいるかもしれません。

100円というお金は変わりませんが、
それを受け取って、どう思ったかによって、その人の幸不幸が違ってくるのです。

ここで、この苦しみの原因を2つほど挙げてみましょう。

1つは、自己憐憫(れんびん)を挙げることができましょう。
これは自分が愛(いと)おしいという思いです。
それによって苦しみが出てくるのが1つです。

私がこんなに一生懸命仕事をしているのに、給料が上がらない。
これは自分を愛おしいと思っているところからくる苦しみです。

私はこんなに一生懸命、家族のために働いているのに、
みんな認めてくれない。感謝の言葉もない。だから苦しい。これが自己憐憫です。

2つ目は、不安な思いが苦しみを引き寄せてくるということです。

もし子どもさんがいらっしゃった場合、
「子どもが今日、けがをしないかしら、いじめにあわないかしら、
テストがちゃんと出来たかしら、まじめに先生の話を聞いているかしら・・・」
と、そんな不安な思いを抱いていると、
やがてこの思いが苦しみに変わってくるわけです。

不安な思いは、不安な事ごとを引きつけてきます。

子供が心配で心配でたまらないと思ったとき、
その心配に比例して、子どもがそのような心配を作ってくる場合があるわけです。

こんな思いの法則がありますので、その法則をよく理解し、
「不安な思いはいけないな、
プラスの思いを、いつも持っていなくてはいけないのだな」
ということを感じていただきたいわけです。

バラバラな思い

思いはみな、それぞれです。

たとえば私のことですが、東京に何度も研修にいきます。

東京にいって大学で講義を聞いたり、何らかの集いで、聞きたい講師がいれば、
そこに出かけていって、話を聞くようにしています。

東京に行って驚くことは、人の多さです。
交差点で待っていた人たちが、信号が青になると一斉に道を横断します。

こんなに多くの人がいて、よくぶつからなものだと感心するのですが、
その人波の中を通っていると感じることがあるのです。

それは、みなバラバラに行動しているということです。

バラバラというのは、人びとが個々独自の考えで行動して、
離ればなれになっている状態をいいます。

たくさんの人山(ひとやま)の中には、
何人かの友達と歩いている人もいますが、それらの人たちは一つに見えます。
彼らは仲間なので、共通意識があり、バラバラには見えません。

思いというのは、それぞれ違った考え方を持っていると、
互いが離ればなれになって、バラバラになっていくのです。

家庭の中で、お父さん、お母さん、子どもやお年寄りが、
みんな違う思いや考え方を持っていると、その家はまとまりがなく、
バラバラになっていきます。

思いや考え方が違うので、バラバラになってしまうのです。

家庭が一つになりたいと思えば、何か一つの思いを互いが共通に持ち、
その共通の思いを共に育てていくと、家庭が一つになっていくのです。

「あの家庭はみな助け合って明るい家庭だなあ」と思える家庭は、
先祖様を大切しましょうとか、出来る限り一緒に食事を取って、
食事の前には必ず手を合わせて「いただきます」を言いましょうとか、
そんな共にすることや、生活していく思いを大切にしているものです。

共通の思い

昨年ロンドンでオリンピックがありました。
個人競技も団体でも、女性の活躍が目立ちましたね。

特に団体競技の女子サッカーが銀メダルを取りました。

決勝戦でアメリカに負けましたが、
平均身長163センチの小さな身体で、よく戦いました。

団体競技の要(かなめ)は、やはりみんなが一つになって戦うことでしょう。
個々バラバラでは、団体としての力がでません。

また心を一つにして戦った女子の卓球。
福原愛選手と平野早矢香選手、そして石川佳純選手が団体で銀を取りました。

卓球は個人競技のイメージが強いのですが、
彼女たちは団体で、それぞれの個性を生かしながら、一つになり戦いました。
その結果が、銀メダルだったわけです。

それぞれの個性や力が違っていても、一つになって戦うという「思い」があれば、
バラバラな個性でも一つになれ、大きな力を発揮するわけです。

銀に決まったときの、選手たちの涙が、美しかったですね。

女子バレーも、1984年のロサンゼルス大会以来、28年ぶりのメダルだったようです。
補欠の選手を含め13人の思いが一つになったわけです。

みんなが思いを一つにして戦わなければ、決して勝つことはできないでしょう。

優しさという思いの力

女子バレーのセッターであった、竹下佳江(よしえ)選手のことを少しお話しします。
(読売新聞 平成24年8月10日)

彼女は当時34才で、なんと身長が159センチです。
バレーボールの選手としては、絶望的な身長です。

彼女は北九州市の出身で、地元の萩ケ丘小時代にバレーに出合ったようです。
中学校を出たとき、もっとレベルの高い所でやりたいと思い、
親元を離れ練習の厳しい不知火(しらぬい)女子校(現在は誠修高校)に進みました。

当時のバレー部コーチであった荒木晃久先生が
「竹下選手が、全体練習よりも2時間早い午前5時から誰もいない体育館で1人、
壁を相手にトス練習をしていた姿を覚えている」と語っています。

2000年のシドニー五輪出場をかけた最終予選の試合で戦ったのですが、
日本は敗退します。

「あんな小さな選手を入れるから」そんな言葉も聞こえてきました。

「もうバレーは嫌になった、働こう」そう思って、
2002年故郷に戻って、ハローワークで仕事を探し始めたといいます。
荒木先生は「あの子のバレーが認められず、つらい時期だったと思います」
と語っています。

それからあるチームから、熱心な勧誘をうけて、バレーに復帰します。
そして2004年、日本をアテネ五輪出場へと導き、
準々決勝進出に貢献するわけです。

荒木先生がいうのに、「その頃から、竹下のトスが変わった」といいます。

それまでの竹下のトスは「わたしのトスを打ちなさい」でした。
それがスパイカーに合わせて打ちやすいトスを上げるようになったというのです。

「『あなたへ』という優しさがこもっている」 というのです。

トスを上げる思いが、
「打ちなさい」から「あなたのために」という優しさに変わったわけです。
そんな思いがスパイカーに通じて、勝利の道を開いたといえます。

思いには力があるのです。

優しさの思いが相手の心に通じ、
スパイカーとトスする竹下さんが一つになったわけですね。
きっとスパイカーも安心して、ボールを打てたと思います。

思いの性質

ここで思いを次の4つにまとめてみます。

1、思いにはマイナスの思いとプラスの思いがある。
2、まず思いがあって、それが言葉や行動にあらわれる。
3、思いは目には見えない。
4、何を思っても自由である。

1番目は、マイナスの思いとプラスの思いです。
ここでマイナスの思いを挙げてみましょう。

もうダメだ。死んでしまいたい。
どうせやってもできない。できればいいけど、無理。
不安で仕方がない。どうしていつもうまくいかないんだ。
私ほど不幸な人間はいない。
あいつが悪いんだ。社会が、環境がいけない。
母が悪い。父が悪い。おばあさんがいるから不自由だ。
私のことをもっと感謝して。いつも貧乏で苦しい。生まれてこなければよかった。
お金には縁がない。病気になる。

などたくさんあります。
読んでいるだけで、気が落ちてきます。

プラスの思いをあげてみましょう。

ありがとう。嬉しい。幸せだなあ。
いつまでも頑張る。負けない。生かされている。
人生は素晴らしい。一日一日が楽しい。
あなたがいてありがたい。あなたに支えられて感謝します。
これはきっと何かの学びだ。もう少し耐えてみよう。
あの人にもきっと良い所がある。愛が大事だ。
努力を惜しまない。きっと未来は明るい。あきらめない。
夢は必ずかなう。目的を持って生きる。お金には困らない。

まだたくさんあるでしょう。

さて、みなさんは、どちらの思いを抱いて日々生きているでしょうか。

プラスの思いのほうが多い人は、きっと幸せ感が大きいと思います。
マイナスの思いが多い人は、不満や不平が多いことでしょう。

負けない思いが成功をもたらす

プラスの思いの中で最初に「ありがとう」がでてきますが、
家族でもこの思いをみんなが共通に持ち大事にしているところは、
家族が一つになって、幸せも大きくなっていきます。

あるいは、マイナスの思いで、
「母が悪い、父がいけない。こんな子どもだから不幸だ」
などの思いを心に抱いていると、みんなが家に帰るのもいやになって、
バラバラな家族になっていくのです。

ここでプラスの思いと、マイナスの思いを挙げましたが、
この両者を一緒に思うことは難しいことです。

「ありがとう」を言いながら、
相手が悪いという思いを抱くことはできません。

頑張るという思いと、
頑張っても無理という思いを同時に思うことはできません。

今年の初めに、今年もきっと良い年になると願います。
そんな願いと一緒に、不幸になるという思いを一緒に思うこともできないでしょう。

どちらか一方が交互に出てくることはありますが、
同時に思うことはできないわけです。

そうであるならば、プラスの思いを常に抱けるように、
練習をすることが大切なわけです。

バレーボールと言えば、リベロの佐野優子選手も忘れられない選手になりました。
当時33才。身長は竹下さんと同じ159センチです。

その選手もきっと苦難の中をボールと共に、生きてきたのでしょう。

高校生に入るときに、バレー部の監督から
「とてもやないけど、活躍するような子やない」と言われたそうです。

それを跳ね返し、五輪の選手になれたのは「負けない」という思い、
「頑張ります」というプラスの思いでした。

プラスの思いを持っていれば、そういう人なのです。
マイナスの思いを持てば、マイナスの人なのです。

できれば思いをプラスに変えてみてください。
できないと思っていたことが、次々に実現していきます。

(つづく)


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