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ことわざ雑考(2)

いいたいことは明日いえ

今月から「ことわざ雑考」として、ことわざについてお話ししていきます。

今月のことわざは「いいたいことは明日いえ」です。
(『ことわざ・名言辞典』 創元社)

思ったことをすぐに口に出していうと、
相手に不快な思いをさせてしまう場合があります。
特に怒りや不満を思っていて、その思いが言葉として口から出てしまうと、
とんでもない事態になってしまうときもあります。

伊那市に、天竜川にかかっている、小さな赤いつり橋があります。
その小さな橋に、結構車が通るのです。
でも、その橋は一台しか車が通れません。
ですから互いが譲り合って渡らなければならないのです。

私は勝手に「ゆずり橋」という名をつけているのですが、
あるときその橋の所で男性が2人言い争いをしていました。

互いが怒鳴り合っていて、
今にも手が出て相手を殴りかかろうともしていました。
喧嘩でいいたいことは、こんな感じであったと思います。

「先に俺が通ろうとしたのに、相手のお前が無理やり先に渡ってきた。
 俺のほうが先だろう」
「いいじゃないか。そんなことで怒るな」

「何を言っているんだ。謝ったらどうだ」
「謝る必要などない!」
「なにー!」

そんな感じで立ち往生しているので、車が数珠つなぎになっていきます。

一方の人が、それを心配して、
「他の車に迷惑をかける」そう言って、そこで喧嘩が終わりました。
腹立つことがあって、それをすぐ言葉に出してしまうと、互いが大変な思いをするものです。

ある女子学生が友達と喧嘩をしました。
その時、彼女の母がいいました。

「江戸っ子は宵越しの銭はもたない。
 だから宵越しの悪い感情は持たないの。
 悪い感情は、明日の朝になるまでに、
 眠っている間に霧のように消してしまうの。
 朝になったら、自分におはようと大きな声をかけて、
 自分はもう新しくなった。昨日までの自分とは違う。
 学校にいったら、喧嘩した人にも、仲良しの友達のように声をかけるの。
 悪い感情を捨てるの」

そう聞いた彼女は、昨日は何事もなかったように、
喧嘩した友に「おはようと」笑顔で声をかけました。
すると、相手は「昨日はごめんね」という手紙をくれたのです。

今の悪い気持ちを一晩寝かして、嫌なことも、一晩で消して捨ててしまう。
とても賢い方法です。

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