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ことわざ雑考(1)

愛は屋上のカラスに及ぶ

今月から「ことわざ雑考」として、ことわざについてお話ししていきます。

「しきたり雑考」は100回目で、「神かくし」でした。
さまざまな文献を読み、自分なりにまとめてきました。
日頃の小さな仕草に、何か精神的なつながりあることを思い、調べてきたわけです。
よくここまで続いたと思います。

今回から何をテーマにしたらよいかとずっと考えてきました。
禅語にするのか、仏典の「法句経」にするのかと随分迷いましたが、
もっと身近なことわざから、日々の生活について考えていきたいと思います。

このことわざも、人と人とのふれ合いの中で出来、
日々の暮らしに影響を与えてきたと思います。

引用している本は「ことわざ・名言辞典」(創元社編集部)。
ずいぶん古い本で初回発行が、昭和53年です。私が23才のとき買い求めた本です。

この本の最初のページの一番目のことわざは「愛は屋上のカラスに及ぶ」です。

このことわざにふれてもあまり意味がわかりません。
このことわざの反対の意味が、私はあまり好きではありませんが
「坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎い」ということわざです。

ある人が憎くなると、その人の持ち物まで憎らしくなるといとうことでしょうか。
よくわかる気もします。その憎い思いが坊さんに喩えられるのは、
坊さんもあまり好かれてはいないのでしょうか。
手を合わせられる職業ですが、その分、尊敬されるように自分を律しなくてはならないのでしょう。

今月の「愛は屋上のカラスに及ぶ」というのは、坊さんのことわざとは逆に、
その人を愛すると、その家の屋上に止まったカラスさえも、愛の思いが及ぶということです。

若き時、男女互いが愛し合ったとき、その人のくしゃみさえ愛おしいのに、
結婚して長年寄りそって嫌いになると、箸の上げ下げまで気に入らない。
そんな間柄にもなってしまいます。
初心の思いを忘れず、いつまでも愛を育んでいくことが大切です。

ちなみに愛について。
愛は寛容であり、愛は情け深い。
愛はねたむことをしない。愛は高ぶらない。自分の利益を求めない。
いらだたない。すべてを忍び、真理を喜ぶ。(「聖書」から)

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