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しきたり雑考(99)

天狗2

今月は「天狗」についてお話しします。
{『現代民話考1 河童・天狗・神隠し』 松谷みよ子著 立風書房を参考}

世には不思議なことがたくさんあって、
その原因が分からなくて、不安や怖れをいだくこともあります、
と先月書きました。

そのような事があれば、興味本心に近づいてみたりせず、
その場から離れ、あまり関心をもたないほうがよいかもしれません。

天狗と言えば、源義経が牛若丸と言われていたころ、
7歳ころから16歳ころまで鞍馬山で修行に励んだとき、
夜、武術や兵法を教えたのは天狗で、
この山には天狗が集結する地だとも言われています。
ただ天狗に化けた何モノかが武術を教えたとも。

天狗にはさまざまな伝えがあり、たとえば、
古い木や姿の良い木には神(天狗)が寄りそうとも考えられているのです。
たとえば天狗の木を伐(き)ろうとして、たたりを受ける例が多いと言います。
そんな時に、岐阜県のある男性が、天狗の木かどうかを見分けるのに、
斧(よき)をその木に立てかけて、ひとまわりよそをまわってきて、
まだそのまま斧が立っていれば伐ってもよいと言います。
天狗の木なら、その斧をそのままにしておくはずがないというわけです。

天狗の姿はさまざまで、
よく知られている姿は鼻が高く赤い顔をしているということです。
次の話は、少し違った姿の天狗です。神社で体験した人の話です。
私自身、神社で不思議な体験をしましたが、
昔の言い伝えを軽率に扱ってはいけないという学びをしたことがあります。

滋賀県の田中さんという人が古老から聞いた話です。

村に鎮守の森があて、杉やヒノキの大木で社殿がおおわれ、
昼でも暗いほど茂っているところです。

社殿の右側に銀杏の木が数本あり、秋になると黄色い葉が美しく映え、
葉が社殿の屋根に落ちると、黄色い屋根になってしまうほどだそうです。

そんなある日、老人が社殿に参拝し空を見上げると、
銀杏の枝に、鼻の高い両方にミノのようなものを着た小さな老人が
腰かけて休んでいるのが見えたのです。

その時、老人らしい怪物が人の気配に気づいたのか、
ものすごい羽音を立てて、どこかへ飛び去っていったという。

あとに、銀杏の見事な葉が一枚もなく落ちて、
あたりが急に明るくなったといいます。

しばらくして北の方から、雲が出て、霰(あられ)が降り出したのです。

本当の話です。

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