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しきたり雑考(90)

憑きもの2

今月は「憑きもの2」についてお話しします。
{『日本迷信集』今野圓輔著 河出文庫を参考}

先月ヘビがおばあさんに憑いたというお話をしました。
死んだヘビを見て、おばあさんは「かわいそうに」と思った。
その思いにヘビがおばあさんに憑いて、助けを求め、
そのためにおばあさんが、医者にも治せない病気になったという話です。

その話で、『日本迷信集』を書かれた今野さんは、
こんな言葉を思い出すと書いています。
「なまじかけるな、薄なさけ」です。
ほんとうに助ける気もないのに、かわいそうだという中途半端な同情は、
相手を迷わせるだけとも言っています。

憑きものについては、次のように述べています。

憑きものと総称されているものは、
神霊もしくは神霊めいた力を持ったモノがとりつくと信じられている現象で、
憑かれた者は、一時的かあるいは永久的に独特の精神病的症状に陥るもの。

文献ではすでに平安朝の記録にもあり、
憑きものの迷信の実害のはなはだしいことは、江戸時代から指摘されてきた。

と。

憑きものについては、
特に心の思いが影響されていると言われていますが、
こんな場合も、おそらく、
何かの憑きものらしきモノが憑いてしまった出来事ではないかと推測します。

ある投書で、「記憶をなくす夫」という題です。

「記憶をなくす夫」

私はほとんどお酒が飲めません。
大学時代、友達に連れられて初めてスナックに行き、ビールを飲みましたが、
苦しくて気分が悪くなるだけで、それ以来飲もうと思わなくなりました。

反対に夫は、お酒が大好きです。
いつも穏やかな人ですが、お酒を飲んで帰ると表情が変わり、
家の中を歩き回るので必ず言い争いになります。

それが朝になると、夫は「記憶にない」のです。
私はお酒に酔った経験がないので全く理解できません。
結婚以来、この繰り返しです。

でも今はコロナ禍で2次会がなくなり、
夫は記憶のある状態で帰るので喜んでいます。
このまま飲み過ぎないことを願っています。

(読売新聞 令和4年12月4日付)

こんな投書です。

酒に酔い泥酔すると、
何やらモノが憑いてその人に入り込み、そのモノに支配されるのです。
ですから、その時は記憶が失われるのです。

一晩寝て、そのモノが出て自分に戻るのですが、
前夜の記憶は抜け落ちているのです。
お酒もほどほどが良いと思われます。

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