ホーム > 法愛 4月号 > しきたり雑考

しきたり雑考(89)

憑きもの

今月は「憑きもの」についてお話しします。
{『日本迷信集』今野圓輔著 河出文庫を参考}

この憑くという字は、
「よりかかるとか、もたれかかる、すがる」という意味があります。
何かの霊が憑くとか、昔ではキツネ憑き、タヌキ憑き、
あるいはヘビ憑きなどと、よく言われています。

ある芸能人が、帰り道、
タヌキ(だと思いますが)が、事故にあって死んでいた。
可哀そうに思って、そのタヌキを拾い、
近くに穴を掘って、墓をつくり、家に帰ってきた。

それを知らないで、玄関で迎えた奥さんは、
「あなた何か憑いている。ちょっと待って」といい、
火打石(だったと思います)をもってきて
「カチ、カチ」と旦那さんに向けて打った。
するとそのタヌキの霊が離れていった。

後で、旦那さんから詳しい話を聞いた奥さんは、
「やはり」とうなずいた。
この奥さん、少し霊が見えるよう・・・。

そんな会話をテレビで見たことがあります。

今野さんの本にも、こんな例話が載っています。

今野さんが学生のころの話だそうです。
青森県の津軽半島へ民間の巫女(みこ)を調査した時だそうです。
この付近では巫女をイタコと呼んでいたようです。

このときの巫女の仕事は
「口寄せと言って、生霊や死霊を呼び出して、その言葉を世に伝え、
 あるいは病気の原因を探り、行方知れずになった者や失せ物を占ったりする」
そんな仕事をする人です。

ヘビを描いた小絵馬を持ったおばあさんと道連れになって、
こんな話を聞いたというのです。

そのおばあさん、病気を患い、イタコに占ってもらったのです。すると、
「おまえは、道端で半殺しになったヘビを見たとき、
 かわいそうになあと思ったことがあったろう。
 それで、そのヘビがお前にとっついてしまったのだ」
と、言われたそうです。

そのおばあさん、そう言われて、
「そんなことがあったかもしれない。
 だからこの病気はお医者様にかかっても治らなかった」
と言ったそうです。

よくペットを飼って、死んだら、家の内には埋めるなということをいいます。
あまりにもペットを恋しく思い、死んでも忘れないでいると、
そのペットが行くところへ行けないで、その家に災いを起こしやすい、
ということが言われています。

今もこんなことがあるかもしれません。

バックナンバーを読む このページの先頭へ戻る