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しきたり雑考(88)

禁忌3

今月は「禁忌、忌むべき禁じること3」についてお話しします。
{『日本迷信集』今野圓輔著 河出文庫を参考}

今月は衣服についての禁忌を考えてみます。
調べてみると、たくさんの「してはいけない」ことがあって、
それをすれば悪い事が起こるという俗信です。

現代では、おそらく信じないことでしょうが、
昔の人はなぜそんなに衣服に対していけないという禁忌を信じたのでしょう。
たくさんあるので、現代にそったものを、少し挙げていきます。

まず、「身につける新しい物をおろした時は正門から出るもの。
門のない家がほとんどなので、禁忌は薄れています。

「新しい衣装を着る時は、男は左、女は右から手を通し南に向かって着るもの」
「新しい物をおろすときには、吉日を選ぶ」
あまり聞きません。

「他人の着物を着始めすると、憎まれる」
何となくわかる気がします。

「他人の衣類をその人の着る前で着ると病気がうつる」
「人の着ものを初着すると、新しい着物が着られなくなる」
要は、他人の新しい着物、服は着てはいけないということですね。
衣服売り場の試着はどうなるのでしょう。まだ、他人のものでないから、よいのでしょうか。

「夜、新しい着物を着ると衣食住に不自由する」
「雨の日に新しい着物を着始めてはならない」
「新しい着物を着て、便所に行くな」
これは汚れるからでしょうか。

あるいは、こんな禁忌もあります。
「左前に着ると、早く死ぬ」
「左前に着ると、親の死に目に会えない」
これらは亡くなった人に着物を着せるのは、左前なので、その影響でしょう。

「衿(着物のえり)を織り込んで着ると仏」
「襟(一般的は服のえり)のない着物を着ると死人に道ずれにされる」
少し恐ろしい禁忌です。

「裏返しに着ると、雨が降る」
「しつけ糸を取らぬ着物を着ると、キツネに化かされる。
 背が伸びなくなる。出世できない。
火事の時逃げられなくなる。犬に吠えつけられる」
このしつけ糸を取らないで着るは、さまざまな地方での謂れ方が違います。
注意をしなさいという警告にも思えます。

衣服にかかわる俗信ですが、それほど身近なものとして、
人びとはこの衣服を大事に扱ったのだと思います。
それだけ衣服が手に入りにくい豊かではない時代だったとも考えられます。
物を大事にする精神を忘れないことです。

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