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しきたり雑考(27)

夜に口笛を吹かない

今月は「夜に口笛を吹かない」についてお話しいたします。

昔から「夜口笛を吹くと蛇(鬼)がくる」と言われていて、
私の子どものころ口笛を吹いて叱られたことがありました。
今ではあまり言わなくなったと思いますが。

蛇を好きな人はあまりいないと思います。
時々テレビなどで蛇を可愛がり首に巻いている人を見ますが、
信じられない世界のようにも思えます。

だいたいの人は心地よくないものとして感じています。
そんなものが夜に口笛を吹くと出て来るというのです。

特に平安時代の人は夜という闇は
魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界であると感じていました。
魑魅魍魎とは化けものです。
今でも真っ暗な夜は、あまり気持ちのいいものではありません。

神社などのお祭りで笛を吹いているのをよく見たことがあります。
これは涼やかな笛の音によって、神様が神界より降りてこられるようにと、
笛を吹くわけです。

人の口笛もそんな笛の音に似ていて、
何かを呼ぶ、そんな力があると思ったのです。

その呼ぶものが夜であれば、
人に危害を加える迷った霊や化け物の類(たぐい)と信じて、
夜は口笛を吹いてはいけないと戒めたわけです。

「耳なし芳一」という話があります。

源平の戦いで、平家一族と共に壇ノ浦に入水した安徳天皇と、
その平家一門を祀った阿弥陀寺というお寺に、芳一というびわ法師がいました。
目が不自由ではあったのですが、そのびわの弾き語りは優れたものがあったようです。

ある日、人が訪ねてきて、ぜひそのびわの弾き語りを聞きたいというので、
その人についていきました。

昨夜一晩、芳一がいないのを不思議に思った、その寺の和尚は、
芳一にどこへいったのかを尋ねましたが、芳一は何も言いません。

その夜、そっと芳一の後をつけると、
安徳天皇のお墓の前で、びわの弾き語りをしています。

和尚は亡霊に取り憑かれていると思い、
芳一の身体にお経文を書きましたが、耳だけ置き忘れたので、
夜迎えにきた亡霊が、耳だけ見えたので、
その耳をはぎ取って持っていってしまったというお話です。

これは夜の事で、
亡霊を呼ぶような口笛は、夜吹かないほうがよいかもしれませんね。

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