仏事の心構え(156)
仏像の見方について 36 韋駄天
今月は韋駄天(いだてん)です。
この韋駄天は仏様の名前ですが、よく禅宗のお寺の庫裡に祀られています。
私のお寺も禅宗なので、この韋駄天を祀っています。
その理由は修行を妨げる魔があるときに、この韋駄天が走り来て、
その魔を除くと言われているからです。
禅宗の寺院では修行を大切にしますから、この仏様を祀っているわけです。
韋駄天は、歓喜天の弟であるとも言われています。
この韋駄天には次のようなお話があります。
お釈迦様が亡くなられた時、火葬にしました。
火葬にしたお釈迦様のお骨を舎利(しゃり)というのですが、
その舎利を祀りたいという人が何人もいて、みんなで相談し八つに分けました。
徳ある人のお骨は、それを祀りたいと言う人が何人も現れるのですね。
今では財産分けで一番欲しくないのが、お骨だと言われる場合もあり、
いかに生前、徳を培っておくことの大切かを思います。
お釈迦様が亡くなられて火葬をし、みんな悲しみの中にある時、
捷疾鬼(しょうしつき)という鬼が、お釈迦様の歯を奪い取り、
足の速いことにまかせて逃げ出したのです。
そのとき韋駄天が一瞬のうちに須弥山の頂上にある三十三天まで、
その鬼を追いかけていって、取り戻してきたのです。
そんな逸話が残っていますが、それほど足が速いのです。
このお話から、仏の舎利を取り戻したということから、
盗難除(とうなんよ)けの仏様としても信仰を集めています。
また、子どもの病魔を除くという信仰も持っています。
お姿はお立ちになり、
甲冑(かっちゅう)を付け、合掌して手と胸の間に剣を横たえています。
また宝棒(ほうぼう)といって棍棒(こんぼう)のようなもの持っているものもあります。