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ことわざ雑考(21)

流るる水は腐らず

今月は「流るる水は腐らず」です。
{『ことわざ・名言辞典』(創元社)を参考}

意味は、「常に活動するものは腐らないことをいう。
『流水腐らず』ともいう」とあります。

流れている水は、常に変化しているので、
そこに住む魚や草たちは、その流れを心地よく受けとめ、
その川の中で暮らすことができます。そんな水が淀んしまうと、
水が腐ってきて、魚も草たちも住めなくなってしまいます。

人としての生きる淀みは、どんな状態をいうのでしょう。
淀むと心まで腐敗して、苦しみが増し、人間性が失われてきます。

定年を迎えてひと時は、仕事をしなくて楽な日々が続きますが、
しだいに心が淀んできて、用がないことに耐えられなくなってきます。

「きょうよう」という言葉をよく聞きます。
「今日、用事がある」という意味にとらえ、
何かすることがあれば、水が流れるように、
日々を新鮮に生きることができるのです。

あるいは、嫌なことを言われたり、粗末な扱いを受けて、
それが苦になり、いつまでも心に留めておくと、
その心の場所が淀んできて、不幸という悪臭を放つようになります。
それは自らが時間の流れを止めてしまっているからです。

母を介護している60代の女性が、
自分を非難するメールを、何もしない弟に送っているのを知り、
弟もそれに同調するメールを送っていた。
それを見て、怒りを感じ、
母の顔を見るたびに、はらわたが煮えくり返そう、
という女性がいました。

非難するメールが心に淀んでいて、そこから悪なる思いが発生しているといえます。

こんな禅語があります。

風、疎竹(そちく)より来たる。
風過ぎて竹、声を留めず。
雁、寒潭(かんたん)を渡る。
雁去って潭(たん)、影を留めず

「竹があってそこに風が吹くとサーっという音がするけれど、
 風が去ってしまえば、もう風の音はしない。

 雁の群れが冬の湖を渡るとき、その影が湖面に映る。
 しかし雁が去ってしまえば、もう雁の影はない」

 そんな意味です。

人生にはいろんな出来事があるけれど、
過ぎ去ったことならば、いつまでも心に留めない。
くよくよしない。落ち込まない。そんな意味です。

「まあいいか」と、その嫌なことを捨ててしまう。
そんな生き方が、心を腐らせない方法といえます。

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