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みにミニ法話

(283)「この場所に咲く」

6月になると梅雨になり、その時に好んで咲くのが、アジサイです。
アジサイは紫や赤などさまざまな色の花を咲かせ、
特に雨の日は、その花の色が優しくほほえんでいるようです。

アジサイは決して冬には咲きません。
この時期を選んで、咲いているかのようです。

お寺の周りにも春になるとスミレの花が咲きます。
さまざまな種類のスミレの花が咲き、その定められた場所に、
精一杯、きれいな花を咲かせています。

山肌に咲くスミレ。日陰に咲くスミレ。
日当たりのいい場所に咲くスミレ。山の中に咲くスミレ。
みなほほえんで咲いています。

アジサイは雨の日々に咲き、
スミレの花は、その場所で精一杯生きぬいています。

人も同じです。
今ある場所に根を下ろし、しっかり生きぬく姿勢が大事であると思われます。

その場合、今ある場所を嫌いにならず、その場所の良い点を見出し、
そこから人生の栄養を吸い取り、心の学びとしていくことが大事になります。

「隣の花は赤い」という諺があります。
これは「他人の物はよく見えてうらやましく思える」という意味です。

これは物に限らず、あの家庭に生まれたほうが幸せだった。
信州でなく、違う場所で生まれたほうが幸せかもしれない。
そう思う時もあります。

しかし、他の物や他の場所はよく見えるものです。
隣の家庭でも、幸せそうに見えて、実はよく聞くと、
その家庭での悩みや不安を抱えてみな生きています。

その悩みをどう乗り越え、
この場所で私たちの幸せをどのように作りだせばよいのかと、
みな悩み、努力をしています。

もしかすれば、隣の家の人たちは、
自分の家庭をうらやましく思っているかもしれません。
隣も同じように、「隣の花は赤い」と思ってしまうものなのです。

できれば、この場所に花を咲かせ、
その咲かせた花で、隣の家をも幸せの花で包んであげる。
そんな気高い精神が必要なのかもしれません。

この場所に幸せの花を咲かせる。
そう思い、精一杯生きている人に、さらに違った場所で花を咲かせる、
そんな尊い縁が結ばれていきます。