ホーム > 法愛 4月号 > みにミニ法話

みにミニ法話

(265)「省みる美しさ」

一年暮らしてくると、今年あったさまざまな出来事が思い返されます。
心を静めて、一年あったことを思い浮かべると、
あっと過ぎてしまったように見えた一年が、ずっしり重い、
大切な時を重ねてきたことを思います。

護国寺では何百年ぶりに鐘楼(平成26年のこと)ができました。
この4月に京都まで行って、鐘の火入れの儀式に行き、
この11月3日に、落慶をしました。
あるご夫婦の願いによって建てられました。

その鐘に銘を入れました。
普通は漢文の難しい文字を入れるのですが、
お施主様が、和尚さんの詩的な文章がよいというので、
どこにもない銘をいれさせていただきました。

私が書いた詩です。

時の流れは止まらず
精いっぱい生き抜いて
そして 支えられ生かされ
感謝の思いが心に満ちる
今 み仏のほほえみが
この鐘の音に感じられる

こんな文章です。

人生を省みると、そこには生かされ支えられてきた多くの人や出来事があった。
それが美しく思い出され、感謝の思いが、心の中にあふれてくる。
そんな意味の詩の銘です。

人生には苦しいことも悲しいこともたくさんありますが、
その苦しみや困難なことをいつまでも思い返して、
辛いとか恨みごとを言っているよりも、その苦しみのおかげで、
さまざまな事を学ばさせていただいた。ありがたい。
そう思うことで、辛い人生が、美しい人生に変わっていくのです。

私が書いたもう一つの鐘の銘は、

み仏は あらゆるものに化身して 私たちを見守る
この鐘の音にも み仏の慈悲の思いが 響き渡ってくる
聞け み仏の慈悲の思いを

今年一年を振り返ってみて、
み仏に守られ生かされてきた出来事がたくさんあったと思います。

不幸な出来事も、きっと学びのために仏がくださった試練であったと思えば、
すべてが幸福な出来事に変わっていきます。
素直な思いで省みるものは、美しい出来事ばかりです。

年の瀬に、美しい神仏の響きを静かに聞いてみます。