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みにミニ法話

(231)「ひと色の悟り」

この「ひと色」とは禅語です。禅の言葉です。

人が迷っているときには、
「ああでもない。こうでもない。ああしようか。こうしようか」
と心の中が、いくつにも分かれます。分かれるので、苦しむわけです。

迷いがない時には、心の揺れがなくなり、
「これでやってみよう」とか
「この考えでやってみよう」と、心が一つのことに絞られるので、
迷いなく、前を向いて生きられるのです。

それを色にたとえたのが、このひと色という禅語です。
一色と書いて「いっしき」と読む場合が多いかもしれません。
心の中にさまざまな色がある状態を迷いの状態で表し、
迷いがない状態を一つの色で表すのです。

たとえば受験の時、始めはどちらの学校を受験しようかと迷います。
それは心にさまざまな色がある状態です。
しかし、やがてこの学校に絞って勉強しようと思えば、
今までの迷いがなくなり、勉強に励むことができます。
この状態をひと色という言葉で表すのです。

初めは愛し合って結婚したときには、ひと色であった夫婦仲も、
それぞれの欠点が見えてきたり、意見の食い違いが出てきたりして、
さまざまな色が出てきます。

それが迷いにつながっていって、
「なぜ、こんな人と結婚してしまったのだろう」と思う時も出てきます。
それは、さまざまな色に心が染められ、
それによって迷いが生じているからです。

そんな時には、お互いが「ひと色」の色に染まることなのです。
お互いが「信頼」という色で染まると、
相手のことを信じて待ってあげる力がつき迷いがなくなってきます。

あるいは「感謝」というひと色で心を染めると、
支え合って生きていることが浮き出してきて、
互いに「ありがとう」という言葉がで、
幸せの日々を送ることができるようになるわけです。

疑いや、嫉妬、不満や不平などのさまざまな色が
心の中に染められていくと、そこには幸せの花は咲かないでしょう。

大きな観点から言えば、
自らを常に正しい考えや思いでひと色に染めて生きることで、
人生の迷いがなくなり、日々を穏やかに生きていけるようになります。
そこにはきっと幸せの花が咲きだすことでしょう。