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みにミニ法話

(223)「この場所で生きる」

住めば都という言葉がありますが、
いったん住みなれると、そこがとても居心地のよい場所になって、
離れることが出来なくなります。

東日本大震災で被災された方や、原発で自分の家に戻れなくなった人が、
いまだにおられるようですが、
大変なことだと思いますし、
自分の住む場所に帰れないというのは、とても苦しいことだと思います。

「この場所で生きる」は、また別の角度からのお話です。

それは苦しい場所で生きているとき、
そこをすぐ逃げ出さないで、できるだけその場所で頑張ってみる、
という意味での考え方です。

逃げることで最大のマイナス行動は、自殺になりましょう。
「もう逃げたい。死ねば楽になる」と思って自分で逝ってしまうのです。
そんなとき、ちょっと待ってくださいと言いたいのです。

神様や仏様は、自分に耐えられないような苦難は与えないと、
よく言われることです。

何か生きるための工夫をすれば、そんな難所もなんとか切り抜けて、
幸せの時を得ることができるかもしれません。

悪魔が一番活用するくさびは「失望というくさび」だそうです。
そのくさびを人の心に打ち込めば、
必ずそのくさびにさまざまなマイナスの思いが引っ掛かって、
その人が絶望の底に落ち、やがて悪魔の餌食(えじき)になってしまうというのです。

この苦しい場所で生きるためにも、失望というくさびを打たれることなく、
常に希望を捨てずに、頑張りぬく精神が必要になります。

たまに朽ちた屋根に名も知れない花が咲いていることがあって、
そのとき「よくあんな場所に自分の住む場所を選んだなあ」と思うことがあります。

震災で被災した町の瓦礫の中にもタンポポが咲いたり、
名も知れない小さな花が咲いているのを見たことがあります。
どこでも、与えられた場所で希望を抱いて生きていけば、
必ず幸せの光を見ることができると思うのです。

この場所で生きいている意味を真摯に受け取り、
そこから多くの生き方を学びとっていくことで、
人は人生に深い意味を悟るのだと思います。