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みにミニ法話

(167)「やさしさがあふれてくる」

心の内からやさしさがあふれてきて、まわりの人を幸せにしていく。

そんな生き方ができればと思いますが、
「そんな馬鹿なことができるはずはない」と思われる人もいらっしゃると思います。

72才になる女の人がバスに乗りました。
重い荷物も抱えていて、空いている席を探しましたが、ありません。
席には登校中の高校生が10人ほどおしゃべりしながら座っていました。

そのうち一人が、この女性の顔を見て
「どうぞ」といって席を譲ってくれました。

お礼をいって座らせてもらったのですが、
その子とおしゃべりをしていた隣の女の子が
「うわあ、びっくりした。なによ、いい子ぶっちゃって」
と大きな声を上げたのです。

この女性はこの言葉にびっくりして
「あのね、荷物重かったから、席を譲ってもらって、とてもうれしいわよ」
というと、大声をあげた女の子はキョトンとしている。
その女の子の前には別の老人がつり革につかまっている。

思いやりのある子をちゃかしたり冷やかしたり。
あとでいじめをうけなければよいのだけれど・・・。
よい子を引きずりおろすような風潮に考え込んでしまった。

(朝日新聞 平成18年7月25日付)

こんな投書がありました。

よいことをすると、「何してんの」と批判する。
「人のため」というと「何偽善ぶってるの、そんなことできるはずがないじゃない」
という。

ましてや「やさしさがふれてくる」といえば、
「そんなこときれいごと言って・・・」と思ってしまう。

その心は、席を譲った子をちゃかした女の子のように、心が病んでいると思うのです。

「やさしさがあふれてくる」という心境は、ほんとうはあたりまえのことで、
とても大切な生きる心構えなのですが、
それをどこか遠い世界のことのように思ったならば、
「自らの心が病んでいる」と見極めなくてはならないと思います。

まず「やさしさを大切にしよう」と思う。
そう思って、次に少しずつ実践にうつしていく。
そうすると、木漏れ日のように、心の内からやさしさの光が漏れてくるのです。