ホーム > 法愛 4月号 > みにミニ法話

みにミニ法話

(106)「善悪の報い」

次の話は平安時代の初期に書かれた『日本霊異記』に出てくる実際にあった出来事です。

今の香川県のある里に、裕福な家がありました。
その家の隣に貧しい爺さんと婆さんが住んでいました。
そこで裕福な家で、爺さんと婆さんの面倒を見てあげることにしたのです。

その家の主人が「私たちの食べるものを毎日分けてあげよう」というので、
使用人たちもそうしたのですが、しばらくして「自分の分け前が減る」と言い出し、
食べ物を与えなくなりました。

しかしその家の主婦は優しく、自分のものを分けてあげ、
爺さん、婆さんを養っていました。

あるとき一人の使用人が、海で釣り人からカキを10個買ったのですが、
可哀相に思って海に逃がしてやりました。

その使用人が仕事中に脚を踏みはずし死んでしまったのです。

そこで家の者たちがお祓いをしてもらうと、
「このものは七日の間、焼かないでそのままにしておきなさい」といいます。
すると七日過ぎて、生き返って、こんなことを語るのです。

「お坊さんとその信者さんが10人、私を迎えにきました。
途中、黄金の宮殿が聳え立っているのを見ました。

『あの宮殿は・・・』と尋ねると、
『あれはお前がいた家の主婦が生まれかわって住む家だ。
主婦は優しく慈しみ深い人だから、その功徳によって宮殿ができているのだ』
といいます。

さらに進むと、一本の角を生やした鬼がでてきて、私の首を切ろうとしました。

恐ろしくて震え上がったのですが、
お坊さんとその信者さん10人が助けてくれたのです。

私はその方達に『いったいあなた達は誰ですか』と聞きました。
すると『私たちはあなたが海で助けてくれたカキです』というのです」

生き返った使用人は、その後思いやり深い人生を送ったといいます。

この出来事を記す最後に、「善悪の報いは必ずやってくる」と書いています。

ずいぶん昔の話ではありますが、「善い事をすれば善い報いを得られ、悪い事をすれば悪い報いを得る」という仏教の教えは、この時代も大切にされていたのです。