しきたり雑考(86)
禁忌
今月は「禁忌、忌むべき禁じること」についてお話しします。
{『日本迷信集』今野圓輔著 河出文庫を参考}
世の中にはしてはいけないことがたくさんあります。
法律や道徳的なこと以外にも、迷信や俗信の中で、
このことをすると、不幸になる、大変なことになる。
そんな忌むべきものがたくさんあります。
たとえば、よく言われるように、
夜爪を切ってはいけないとか、
正月六日は爪の切り始めの日だから、この日まで爪はきるものではない。
そんな禁忌があります。
昔から言い伝えられている禁忌を少し挙げてみましょう。
- 昔の墓地、神社の跡などへは家をたてるものではない。
- 不幸のあった家では養蚕は必ず失敗する。
- その日についた餅は、すぐ焼いて食べるものではない。
- 新築儀礼(おたてまえ)の投げ餅は焼いて食うものではない。
- 死んだ人の身に猫の魂が入ることがあるから、
死人の部屋に猫を絶対にいれてはいけない。
入られると、死人はさながら生きているように起きて歩いたり、
ムックリと起きたりする。 - 卵の殻をまたぐと難産する。
- 外出先で針を使ってはいけない。
- 朝茶を断ると不吉なことがある。
- ざるをかぶると身長が伸びなくなる。
などなど、たくさんあります。
昔の墓地の跡に建物を建てるなということですが、
そこに建てられた建物に、幽霊が出るというのはよく聞くことです。
神社も同じです。
墓参りは午前中にすませ、暗くなってから行くものではない。
幽霊に連れていかれる。そんな迷信もあります。
岩手県の花巻市の女性が経験したことで、
この女性が幼い頃、同級生のお母さんが、
暗くなってから墓参りに行き、うわさになったそうです。
心配していたら、その人は数カ月後に、お墓で亡くなったといいます。
詳しいことはわからないけれど、お化けが連れていったと当時思ったという、
そんな体験をされた女性で、今でも墓参りは昼までにすませていると、
ある投書に書いていました。
「してはいけない」
調べると、そんな迷信がたくさんあります。
昔の人は恐れをかなり敏感に感じていたのでしょうか。
次回も続きの話をします。