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しきたり雑考(84)

名前

今月は「名前」についてお話しします。
{『日本迷信集』今野圓輔著 河出文庫を参考}

名前による姓名判断もあるようですが、
それが当たっているか、そうでないかは別として、
みな名をつけるときには、慎重につける人が多いと思われます。

私の祖父は200人くらいの人の名をつけたと聞いています。
そんな祖父に、名前を変えてほしいという依頼があって、その人は病気がちで、
名前を変えれば元気になるかもしれないとお願いに来たというのです。
祖父が改名をしたら、その人は元気になったという話を聞いたことがあります。

s ある人の名に、秋がついていたので、
「秋に生まれたのですか」と聞くと、「春です」といいます。
「どうして、春に生まれたのに、秋の名につけるのですか」と聞くと、
「生まれた逆の季節の名をつけると、長生きをするというので、つけたようです」
と答えられました。

その人は80才を超えて生きられました。
名前の中にはシメ子とかとめ子、あるいは留松とか捨吉などの名前もあって、
貧しくて生活が苦しいので、もうこれ以上生まれませんようにという
呪術的は意味でつけることもあります。

また、あまり立派な名前をつけると、
「名前負け」して、顔が醜くなるとか、早死にするとか、
昔の人は信じていたようです。

あるいは、今は名に「子」をつける人は少なくなりましたが、
この「子」は昔、身分の高い女性に対する敬称であったようで、
明治以来、一般の人にも付けられるようになったといいます。

姓名学の研究家によれば、
芸名で数字の一と二、三が良いようで、特に三は最上だそうです。
三國連太郎、三波春夫、三橋美智也、三船敏郎、加山雄三などみな三がついています。

また、生まれた当時の社会状況によっても、名前が影響を受けています。
たとえば大正時代には、「正」を使って、正子や正一、
昭和になると、昭子や昭一。

浩宮徳仁(ひろのみやなるひと)親王がご誕生の当時は、
浩美、浩一、浩子などをつける人が多かったようです。

現在は改名するのは難しく、
家庭裁判所では、気に入らないから名を変えたいというのは、許可されません。
ただ、名前が自分の生き方に影響するのは確かで、
自分の名前の意味を今一度振りかえり、名前のような生き方ができているかを、
自らに問うことも大事かもしれません。

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