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しきたり雑考(81)

通りゃんせ

今月は「通りゃんせ」についてお話しします。
{『日本人の風習』千葉公慈著 河出文庫を参考}

通りゃんせ 通りゃんせ
ここはどこの細道じゃ 天神様の細道じゃ
ちいっと通して下しゃんせ 御用のない者通しゃせぬ
この子の七つのお祝いに お札を納めに参ります
行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも 通りゃんせ 通りゃんせ

これは「通りゃんせ」という唄の歌詞です。
今はあまりみませんが、
この唄を歌いながら、遊びをする子ども達がいました。
この唄の発祥の地は、埼玉県川越市の三芳野(みよしの)神社だそうで、
祀られているのは、菅原道真だそうです。

この唄を説明する説は、たくさんあるようです。
そのひとつを挙げてみます。

昔、この神社は川越城の、城の中にあって、
一般の人が自由にはお参りできなかったといいます。

なぜならば、一般の人に紛れて
他国の密偵なるスパイが城内に入り込むことがあって、
それを厳重に取り締まる兵士が門に立っていたというのです。

入る時には入れても、出る時には、調べがきつかったといいます。
そんな状況を歌った唄であるという説があります。

唄に出て来る天神様とは菅原道真のことで、
この方は藤原時平という人に裏切られ、罪を着されて左遷され、
59歳で無念の死を遂げます。
それから祟り神として、都にさまざまな災いをおこし、
やがて、その祟りを鎮めるために、北野天満宮を建て、神として祀り、
祟りが収まったという謂れのある人です。
そんな恐ろしい人への細道を行き、
帰りは何の祟りがあるか分からない。そんな意味もあるかもしれません。

また『徒燃草』の中に、「高名の木登り」の話が載っています。
木の枝を切っているとても危険な時には、何も注意をせず、
仕事が終わって木を降りるときに
「けがをするな。要心して降りよ」と注意をしたという話です。

この話から、行く時はよく注意して行くのですが、
仕事や用事を終え帰り道になると、つい油断してしまって事故に遭う。
だから、帰りはよく注意をはらって帰ること(杉田説)。
そんな意味もあるのかもしれません。

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