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しきたり雑考(80)

指切りと、てるてる坊主

今月は「指切りと、てるてる坊主」についてお話しします。
{『日本人の風習』千葉公慈著 河出文庫を参考}

「指切りげんまん 嘘ついたら針千本のーます」

そんな言葉、呪文(?)は、多くの人が知るところです。
私は誰かと指切りげんまんをした覚えはありませんが、
どうして小指と小指をひっかけて、このような「しぐさ」をするのかは
知らないでいました。

調べると、昔、江戸の遊女が客との愛に偽りがないという証拠に、
小指を切って送ったということから由来しているとあります。
それがやがて約束を守るということで、広く一般に広がったというのです。

指切りげんまんの「げんまん」は、「拳万」と書いて、
約束を破ると、拳(こぶし)で一万回殴り、
さらに針千本の針である裁縫針をその数だけ飲まなくてはならないという意味です。
それほど約束を守ることを戒めたと考えられます。

何故、指を切るかの説明は、定かではありませんが、
推測で、指に魂が宿り(この事実はあります)、指を切ることで、
自分の魂が肉体に帰ってこれない、すなわち死を意味するとも考えられます。

てるてる坊主については、私も小さいころ、
明日、遠足などの待ち遠しい行事があると、
てるてる坊主を作り、軒先につるした記憶があります。
そのてるてる坊主の効果があったのかは覚えていません。

日本は言霊(ことだま)と言って、言葉に魂が宿ると信じていました。
たとえば赤い実をつける「南天」を、「難転」(なんてん)と絡ませて、
家の玄関先に植えると、「難を転じて幸せを招く」という意味にとらえたのです。

このてるてる坊主の「てるてる」も、
太陽が「照る照る」という言霊を意識したのではないかと思われます。
てるてる坊主の坊主は、簡単に推測すれば、
頭を剃った坊さんの頭は照っていると考えたり、
あるいは徳ある坊さんが、祈祷によって雨を降らせたり、
長雨を晴れに変えたりすることがあって、
そんな徳をいただくという意味で、あのような姿になったとも考えられます。

もし、次に日に雨がふれば、てるてる坊主の歌詞の3番に出てくるように、
「そなたの首をちゅんぎるぞ」のように、首を切られるのです。
指切りも、てるてる坊主も、約束を守れなければ、大事な指や首を切られるのです。
無理な約束はしないほうが良い。そう思われます。

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