ホーム > 法愛 3月号 > しきたり雑考

しきたり雑考(77)

饅頭とぼたもち

今月は「饅頭(まんじゅう)とぼたもち」についてお話しします。
{『日本人の風習』千葉公慈著 河出文庫を参考}

「饅頭」も「ぼたもち」も丸いのが特徴です。
神仏にお供えする餅も丸く、四十九日の団子も丸いのが特徴です。

なぜ、丸いのでしょう。
丸い餅には、神仏が宿るという俗信と、霊魂は丸いという、
そんな考えからもきていると言われています。

古くは中国の故事からも推測できるといいます。
三国時代(220年以降)に、諸葛孔明(しょかつこうめい)という宰相が
軍隊を率いてある川を渡ろうとしたとき、川が氾濫して、なかなか渡れません。

聞けば、地元の言い伝えで
「四十九人の首を切って、川の神にお供えすれば氾濫がおさまる」
と聞き、孔明は人の首でなく、小麦粉をこねて人の頭をもした丸い団子を
川の神にささげたところ、川の氾濫を鎮(しず)めることができたという。
そんな故事から来ているという説があります。

この丸い団子のようなものを、当時「蛮頭」(ばんじゅう)と言っていて、
それがいつしか饅頭になり、神様にささげる神聖なものとして
日本に伝えられたといいます。

ですから、全国の有名な神社やお寺には、たくさんのお店が並んでいて、
そのお店には必ずといっていいほど、饅頭が売られています。
これも神様にささげる神聖なものだからでしょう。

ぼたもちは丸いのですが、小豆(あずき)を使って作ります。
この小豆は赤色をしています。神社仏閣には赤く塗られているところがありますが、
この赤色(朱色)は魔除けの力があると言われていて、赤い色を塗(ぬ)るのです。

赤い小豆も災いを除く霊力があって、
邪気を祓う食べ物として古来から大切にされてきました。
この俗信が、ぼたもちと合わさって、
小豆のアンをぼたもちにまとわせたわけです。

胡麻(ごま)のぼたもちがありますが、
この由来は、日蓮上人が鎌倉幕府にとらえられ、処刑されようとする途中、
老婆が胡麻のぼたもちを差し上げたら、処刑をまぬがれたという。
そのぼたもちを「首つなぎぼたもち」といい、今でも伝えられている古事です。

彼岸にぼたもちを作り、仏様や先祖様にお供えするのも、
丸くて赤い神聖な食べ物ゆえに、邪を祓ってくれるからです。

バックナンバーを読む このページの先頭へ戻る