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しきたり雑考(70)

クシャミについて

今月は「クシャミについて」についてお話しします。
{『しぐさの民俗学』ミネルヴァ書房 常光徹著 参考}

クシャミが出た時に、
自分の事をうわさしているのではないかというとらえ方は、
ごく一般に広がっているようです。

それも回数によって異なっていて、
1回目はほめられていると考え、
2回目は誰かにそしられている、あるいは憎まれている、
3回目が誰かにほれられている。
そして4回目が風邪をひいた。
そのように受け止めているようです。

このクシャミを考えてみると、自分に起こってくるものですが、
自分の意志では制することができないので、
自分以外の何かに影響を受けているか、
あるいは働きかけられていると考えるのです。
そこから、人間を超えた霊的な存在が影響をしていると考えたのです。

鎌倉時代に兼好法師が書いた『徒然草』の中に、
クシャミをすると知り合いの稚児が死んでしまうと言って、
呪文である「クサメ、クサメ」と、
年老いた尼僧さんが言っている場面がでてきます。

クシャミは、何か不吉な兆候と考え、
それを追い払う呪文が「クサメ」であったようです。
よくお墓にお参りしたときに、その場でクシャミをしてはいけないと言います。
クシャミをすると、クシャミをした人の魂が、抜け出てしまうと考えたようです。

また、外に出かける時に、クシャミをするのを嫌い、
その時には弾指(たんじ)といって、指を鳴らし、
邪を払ったという伝えもあります。
(弾指は手を拳にして、人差し指を出す時、親指とこすり合わせて音を出すしぐさ)

出かける時には、みな無事に帰ってこられるようにと注意し、
以前、出かける時には玄関から出るというお話をしました。
玄関からでると無事帰ってこられるというのです。

あるいは、出がけに針を使うと縁起が悪く怪我をすると戒めたり、
一年の最初である元旦に喧嘩をすると、一年中喧嘩をするようになる。
生まれたとき雨であると、結婚式の日も雨になる。
そんな俗信が伝えられています。

呪文としての「クサメ」は、邪悪なものを追い払うもので、
相手を罵倒する言葉の意味も持っているようで、
強い言葉の力で邪を撃退するのです。

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