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しきたり雑考(57)

狐の嫁入りを見る

今月は「狐の嫁入りを見る」ということで考えていきます。
(『しぐさの民俗学』ミネルヴァ書房 常光徹著参考)

狐にちなんだ俗信はたくさんあります。
狐に化かされて、一晩中山の中を歩いたという話は結構あるのです。
狐に化かされた対処法も、昔からさまざまなに言われてきました。

少し例をあげてみましょう。

一つは狐に化かされたときには、
頭に草履(ぞうり)をのせるとよい、というのです。
これは草履は踏むものですが、それに踏まれることで、
さかさまの呪法の一種だそうです。

二番目、狐に化かされたときには、
背中に「犬」という字を書くとよいというのです。
これば化け物や幽霊が犬を嫌うというところからきているようです。

三番目に、夜、親指を中にして手を握るのです。
「霊柩車に出会ったら、親指を隠す」と言われていますが、
邪悪なものが爪の先、特に親指から入り込むという考えから来ています。

もう一つ、着物のすそを縛って旅をすればいいというのがあります。
これは着物の先端部分から、霊的なものが出入りするという恐れから
裾を縛るというのです。

狐に関するものでは、日当たり雨、あるいは天気雨ともいいますが、
晴れているのに雨が降る。そんな時に、狐の嫁入りがあるということです。
子どもの頃、私もよくこの俗信を聞いたことがありました。
その嫁入りを見たいために、急いで外に出て、あたりを見回して、
狐の嫁入りの行列を探したものです。

なぜ、日当たり雨に日に、狐の嫁入りがあるのかを、参考にしている
『しぐさの民俗学』の中には、こんな説明がされています。

「結びつくはずのない晴れと雨が結びつくことで、
同じ結びつくことのない狐と嫁入りが結びついてしまうことを、
この俗信はいおうとしている」と。
う〜ん、よくわかりませんね。

この狐の嫁入りを見るためには、方法があるようで、
手の組み方によって、見えるというのです。
それを「狐の窓」とも呼ぶようです。

和歌山県のある地方では
「狐に騙された疑いがあるとき、手の指を二本ずつに分けて、
一方は表向き、一方は裏向きにして組み合わせ、
中央の穴から除くと見える」と伝えています。

狐の嫁入りには、何か別の深い理由があるのかもしれません。

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