しきたり雑考(47)
山姥
今月は「山姥(やまんば)」についてお話し致します。
日本昔話の中に、悪いおじいさんも出てきますが、
悪いおばあさんもたくさんも出てきます。
「舌切り雀」のお話では意地悪ばあさんが、雀に傷を負わせて、
雀の宿からつづらのような箱をいただいてくる。
その箱を開けると、毒蛇などがでてきて、意地悪ばあさんが大変な目にあう。
そんな話です。
これは意地悪であるゆえに、人としての福徳がないゆえの結果ともとれます。
恐ろしいのが山姥です。
一説には、山姥はもともと山の神に仕える巫女が、
信仰の衰退にともない妖怪化した(花部英男説)ものであるとも言われています。
山姥が出てくる有名なお話は「三枚のお札」です。
お寺の小僧が山に栗の実を取りに行き、和尚から
「もし山姥がでたら、このお札を使って逃げなさい」と言われ、
三枚のお札を懐にしまい山に出かけます。案の定、山姥が出て来て、
三枚のお札を使い、そのお札が川になり、山になり、火になって、
小僧は山姥から逃げることができたというお話です。
そんな山姥は、実際にいたのでしょうか。あるいは今もいるのでしょうか。
山にはとても不思議なことがたくさんあって、
昨年、山口県の大島町で、2才の子どもが行方不明になって、
ボランティア活動をしている尾畠さんが発見しました。
このような事件は、たくさんあって、
行方がわからなくなった子供が、
大人でも入れない所にいたということがあるのです。
それも何日も経っているのに元気でいるというのです。
『山怪・一から三』(田中康弘著)という本の中に、
山の不思議がたくさんでてきます。
たとえば山に山菜取りに行った時、
山に入らずその場から帰ってくるおばあさんがいて、
「今日は山に入るのに嫌な感じがする。そんな時はすぐ帰るんだよ。
死んだ人がいっぱいいるんだ。白い着物を着た人たち。信じないでしょう。
それがわかるから、私は災難にあわないんだ。
あの世はあるんだよ。信じられないだろうけどね」
と語っている、そんな事例も出ています。
あるいは、山に入ってよく知っている山なのに出られなくなってしまう。
まるで異空間に入り込んだよう。その場は青い池だったり、白い野原だったりする。
大抵の場合二度とそこにはいけないという。
そんな異界の不思議な世界を、もしかすると山姥で表したのかもしれません。