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しきたり雑考(35)

丑の刻参り

今月は「丑の刻参り」についてお話し致します。
(常光徹説参考)

丑の刻参りは人に見られてはいけないという、
昔からの言い伝えがあります。

丑の刻という時間は、午前2時ごろになります。
夜が静まり返って、誰にも見られない時間といえます。

この丑の刻参りは、
恨みや憎しみをもつ人を呪うための儀式というのか、
呪法です。

ワラ人形を作って、それを神社の神木にはりつけ、
7日間、五寸釘を打ちこみ続けると、
呪った相手が死ぬというのです。

しかし、その様子を見られると、
その呪いは効き目がなくなり、
呪った自分にその呪いが返ってきて、
病気や事故にあって苦しむと言われています。

その呪う姿は、
頭上に2本のローソクを鉢巻きでしばって、
口にはクシをくわえ、白い一反木綿を腰からたらし、
その木綿の裾が地面につかないように、
走らなくてはならないと言われていて、
呪うのも大変なことです。

こんな呪いでなく、なかには念の強い人が、
「あの人は死ねばいい」と思っただけで、
その人がしばらくして死んでしまう。
そんな人もいます。

その人は、
こんな不謹慎なことを思わないよう
気を付けているといいます。

ごく普通の人でも、
何か嫌なことをされたり、いじめをうけたりして、
それを苦にして、逆に相手を呪って
「事故にでもあって、不幸になれ」
などと思ってしまうこともありますが、
「人を呪えば穴二つ」という格言の通り、
相手を呪って、それが実現したとしても、
呪った本人も決して幸せにはなれないということです。

ここで呪う姿を見られたら、
その呪詛は消えてしまうということですが、
人をたぶらかす妖怪などは、その正体を見破られたとき、
その妖怪の力は消えてしまうと言われています。

お釈迦様も悪魔と対峙しましたが、悪魔と見破ったとき、
悪魔はお釈迦様から離れていったと言われています。
見破られると、悪魔もその人についていられないでのす。

ですから、普段から、今思っていることは、
悪の思いか善の思いかをよく判断する、そんな知恵が必要です。
悪なるものであったなら、これはいけないと思い、
その悪を消し去ることで、悪魔も消えるということです。

呪うよりも、相手の幸せを祈ってあげる世界が心地よさそうです。

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