しきたり雑考(16)
土用
今月は「土用」(どよう)のお話を致します。
普通、土用と書きます。
この「用」は、以前は「曜」のほうだったようで、
「盛ん」という意味があります。
いつからか訛(なま)って、「用」を使うようになったといいます。
この土用は一般的には夏の土用で、
よくウナギを食べて、暑さに負けない力をつけるというのが知られているところです。
実はこの土用は春夏秋冬にそれぞれ1回あるので、
合わせると4回あることになります。
まず春の土用があって、18日間ほど過ぎると、立夏になります。
土用は正確には土用に入りを示し、それから18日間は生き盛んな春の季節で、
その盛んな春の季節を終えると、立夏を迎えて夏になるのです。
それから夏の土用を迎え、
それから18日間は、夏という季節がもっとも気が盛んになり、
それが終わると立秋になって、秋を迎えるわけです。
用は意気盛んと説明しましたが、
「土」は土の性質が4つの季節に均等に存在していることを
表しているようです。
夏の土用は梅雨があけで酷暑を迎える時期なので、
昔からこの季節の土用に気を配ってきたといえます。
「土用干し」は、梅雨あけで、
衣類や書籍などに虫やカビを防ぐために陰干しをします。
梅干しも3日ほど日干しにするようですが、これも土用干しです。
この季節の土用には土用餅(もち)を食べたり、
ウナギやシジミ、卵に肉などを食べ、夏バテを防いできました。
特に有名なのが土用の丑の日にウナギを食べることです。
十二支の中の丑の日に食べるのです。
ですから、年によって丑の日が2回あることもあります。
これには、いろいろの諸説がありますが、
江戸の蘭学者で平賀源内という人が、
営業が不振であったウナギ屋に「本日土用の丑の日」とはり紙をしたところ、
繁盛したことからきているというのが有名です。
このウナギの栄養の力は、すでに万葉集の中で歌われているようで、
ずいぶん昔から、ウナギに栄養があることは知られていたようですね。