しきたり雑考(13)
花見
今月は「花見」(はなみ)について、お話し致します。
花といえば、日本では桜です。
この花の名前はどこからきたのでしょう。
一説にはこんな解釈があります。
『古事記』に此花之佐久夜姫(コノハナノサクヤヒメ)という神様がでてきます。
とても美しいお姫様で、このお姫様の名前の「サクヤ」が「サクラ」になって、
桜の名がついたと言われています。
桜も美しいのですが、サクヤ姫も美しかったのです。
花見が始まった由来です。
この桜は「サ(田の神)クラ(座)」で、田の神の神座、
すなわち田を守り豊作をもたらす神霊の座であったのです。
神が宿る場所、あるいは神の依代(よりしろ)です。
ですから、その桜の咲き方によって、
今年は豊作であるのか、凶作であるのかの予兆を見たのです。
桜がきれいに咲いていれば、神霊がそこに宿って、
豊作を知らせてくれたということです。
そこから花見が始まったという、古来からの信仰があったようです。
この桜を見る風習は、もともと京都でのことでした。
江戸時代に入って、徳川家光が奈良吉野山の桜を上野に移植させ、
上野を桜の名所にしました。
さらには徳川吉宗の代に、多くの場所に、桜を植えさせ、
江戸に桜の名所をたくさん作ったと言われています。
特に枝垂れ桜は神霊を迎えて祭るのにふさわしい場所に植えられました。
神の座としての美しさがあったのでしょう。
ですから、寺院にはこの枝垂れ桜が多いのです。
また宮中では疫病をしずめるために、桜の花の散るころ、
「鎮花(はなしずめ)の祭」が行われていたようです。
桜の花が散る時、霊力を持つ神霊が姿を消すので、
そのとき疫(えき)なる病の神が活動を始め、
悪疫(あくえき)を広めることがあるので、それを鎮めるために行ったのです。
今でも、神社で神前に桜の花をささげ、
聖なる神の復活を願って、この祭りが行われているようです。
ちなみに、花見団子3色のピンクは桜、
白は去りゆく冬の雪、緑は夏を表しているようです。
神への信仰と、色に深い意味を添える、日本の尊い文化を思います。