ホーム > 法愛 4月号 > しきたり雑考

しきたり雑考(10)

おせち

今月は「おせち」(お節と書く)のお話を致します。

おせちは、もともとは神様への供え物であったようです。

お正月に使う箸(はし)も、
割り箸などと少し形が違って、箸の両側が削ってあります。
それは片側を神様が使い、もう一方を人が使うのです。
真中がふくらんでいるのは、子孫繁栄や五穀豊穣を表しているようです。

この正月の箸は、水引のついた箸袋に入れて、
大晦日の日に神棚の供えておくのです。
そんなお箸で、神様に供えたおせちを食べていただくわけです。
そして、そのおせちをおろして、私たちがいただきます。

それを難しくいうと、神人共食といいます。
神様と食を同じくし、力をいただくのです。

おせちはお重に入れます。
それは「めでたさを重ねる」という意味があるようです。
一の重から与(よ)の重まであり、この四番目は「与」と書きます。
四から連想される「死」を避けたのかもしれません。
また、五の重もあって、そのお重は控え重ともいい、何もいれません。
それは繁栄の余地がまだあるという意味があるのです。

一の重は、祝い肴を入れます。
まめに働けるための健康長寿で黒豆、
子孫繁栄の数の子、田作り・たたきごぼうで五穀豊穣、
栗きんとんは金運で商売繁盛、こんぶ巻きは喜びを表し、
だて巻きが繁栄を意味しています。

二の重は焼き物で海の幸を入れます。
鯛(たい)はめでたい、
腰がまがるまで長生きするという長寿を意味する海老(えび)、
ぶりは年神様に供える魚です。

三の重は、煮物を入れます。
山の幸です。子孫繁栄を願う里芋、
将来の見通しがよいという意味でレンコン、
長く根を張って生きられるためのゴボウ、
芽が出て出世するという意味でくわいを入れます。

与の重は、酢の物を入れます。
紅白なますは、お祝いの水引にみたてます。
酢レンコンは前述したように将来の見通しがよいことです。

これらのおせちは、地域によってずいぶん違っているようですが、
みな神様のお力をいただいて、幸せになれるようにと願った、
日本の尊い文化といえます。

バックナンバーを読む このページの先頭へ戻る