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しきたり雑考

(4)夏越し祓い

今月は「夏越し祓い」についてお話し致します。

6月の儀式を調べていると、どうも年中行事は二重になっているようです。
というのは、お正月とお盆(7月盆)、2月と8月、3月と9月、
そうやって続けて最後に、6月と12月です。

この6月1日は「むけ節句」
あるいは「氷の朔日(ついたち)」「氷の節句」といって、
正月の餅を寒水にさらして作った氷餅(凍餅・こおりもち)を、
6月1日に神様に供え、厄除けとして食べるのです。旧暦の6月です。

少し正月と重なりますが、特に6月30日は12月31日と重なります。
重なって、この夏越し祓いを行うのです。

12月の晦日(みそか)には新年を迎えるために、大祓をします。
日頃の人びとの罪や汚れを払い、清浄になって、新年を迎えます。

この6月30日は1年の前半の最後の日で、
ここで来るべき新しい時期を迎えるために、罪や汚れを払う行事をするわけです。

これが夏越し祓いです。
新暦で、7月末に行うところもあります。

この夏越し祓いで「輪越祭(わこしまつり)」というお祭りがあります。

テレビで見たことがありますが、
神社の境内に「茅(ち)の輪」という丸い輪が立てられ、
そこをくぐるのです。

そこをくぐることで、身の汚れを払うのです。
茅はカヤですから、カヤで作った輪でしょう。

この茅の輪の由来はこうです。

昔、貧しい兄と豊かに暮らす弟がいました。

兄は貧しいながら、武塔天神(ぶとうてんじん)に宿を貸しました。
おそらく神の姿ではなく、一晩の宿を請うたと思います。

優しい兄はその人(神)を泊めてあげました。
弟のほうは裕福であったのですが、泊めてあげませんでした。

そのため兄の子孫は神から茅の輪の呪力によって災難を免れ栄え、
弟のほうは疫病で滅んでしまったという話です。

その輪をくぐるとき
「水無月の夏越しの祓いする人は、千歳(ちとせ)の命延ぶというなり」
と言ってくぐるそうです。

6か月の汚れを祓って、7月からの生活に備えるのです。
日本人は、身心ともに、汚れに敏感であったといえます。

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