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仏事の心構え(155)

仏像の見方について 35 歓喜天

今月は歓喜天(かんぎてん)です。

正確な名は大聖歓喜自在天(だいせいかんぎじざいてん)で、
それを略して歓喜天あるいは聖天(しょうてん)、天尊(てんそん)ともいうようです。

臨済宗のお寺にも歓喜寺という名のお寺がありますので、
この歓喜天も多くの信仰を集めたのだと思います。

姿は今までの仏様とずいぶん変わっていて、
頭は象の形をし、身体は人の形をとっています。

この歓喜天の出身はインドです。
インドは象を大切にするところです。

象はどの獣(けもの)より強く、
いったん象を調教すれば、象がその者に素直に従うというところから、
象を神聖視しているのです。

そんなところから、頭を象の形にしたといわれています。

信仰のあり方として、あらゆる災難を除き、富や福をさずけてくれ、
夫婦和合の願いも叶えてくれるといいます。

そこから性的なシンボルとして水商売の人びとからも篤(あつ)い信仰を得たようです。

頭が象の形をしているといいましたが、
単身の坐像と二体が抱擁しあっている、そんな姿をしているものもあります。

普通仏様は一体で、表現されていますが、二体が抱擁している仏様は非常に珍しく、
広く人々を救う願いが、このような形になっていってのではないかと思われます。

二体が抱擁しているいわれは、次のようです。

昔、ある山中に歓喜王がいて、人々の生気を奪い悪事をしていたので、
それをやめさせるために、観音様が大慈悲の思いから、美しい女性に変身して、
「もし私にふれたければ、私のように仏の教えに従い、
仏法を護る者、守護神になることを誓いなさい」
と言ったそうです。

歓喜王はそのことを約束し、抱擁して、歓喜天となり、
仏法を守護し、多くの人の幸せのために働くものとなったのです。

夫婦相和して、仏の教えを学び、共に仏法を押し進める。

そんな姿が夫婦の美しさなのだと、
美しい女性に変身した観音様が教えているのかもしれません。