仏事の心構え(149)
仏像の見方について 29 大威徳明王
今月は明王の5回目で、明王はこれで最後にします。
今月の明王様は「大威徳明王」(だいいとくみょうおう)です。
この明王は、足が6本あり、水牛に乗っているという特徴を持っています。
以前、孔雀明王をご説明いたしましたが、
その明王は名の通り、孔雀に乗っていました。
ですから、すぐ分かりました。
この大威徳明王も牛に乗っているので、すぐ分かります。
密教のほうでは、阿弥陀様の怒った姿、忿怒形(ふんぬがた)であり、
文殊菩薩の化身とも言われています。
阿弥陀様を信仰する浄土宗ではそう考えてはいないようですが。
禅宗でも明王が文殊菩薩の化身であるとは、あまり聞きません。
しかし、文殊は知恵を表し、そんな化身もあるやもしれません。
水牛に乗っているのは、どのような意味があるのでしょう。
現在、田を耕すのには機械を使います。しかし以前は牛を使っていました。
田んぼの泥水の中を牛が力を込め、歩いていく姿は勇壮ですね。
そんな姿を象徴して、田んぼの泥水をこの世の娑婆世界に置き変え、
あらゆる障害や煩悩を乗り越えて力強く自在に進んでいく姿を
現しているのだそうです。
機械のない昔は、水牛の力をみな頼り、
神仏に似た存在として大事に扱ってきたわけです。
日本でも、馬や牛は大切にされ、人と同じ屋根の下で暮らしていましたね。
足が6本あるのは、この大威徳明王だけのようです。
人間とは思えないような成りたちですが、それだけ人を救うのに、
早く歩いたり、力があったり、さまざまな方向へ自在に行ける、
そんな力を現わしているのだと思われます。
身体の色は青黒く、髪は逆立ち、虎皮を腰にまいています。
足が6本、手も6本、顔も6つ。これを6面6臂(ぴ)6足といいます。