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仏事の心構え(145)

仏像の見方について 245 不動明王

今月は「不動明王」(ふどうみょうおう)についてです。

この仏様は、非常に特徴があるので、誰にも分かると思います。
怒った顔をしていて、身体全体が燃えるような火で覆(おお)われています。

もう少し詳しく調べると、
怒ったような顔をしているのを忿怒相(ふんぬそう)といいます。
激しい怒りの表情です。

これは私たちの煩悩を破壊してくれるものだそうです。
それほど煩悩は除き難いものなのです。

日本でも獅子舞いの獅子頭(ししがしら)は赤くて怒った顔をしています。
これは魔除けの力があるということですから、
忿怒(ふんぬ)の顔の意味は、両者似ているともいえます。

髪の毛は束ねていて、左側にたらしています。
これを策髪(さくほつ)といいます。

頭の上には「まげ」のようなものを付け、蓮華をのせています。
これを頂蓮(ちょうれん)といいます。蓮は悟りの象徴です。

額には3本のシワがあり、目は大きく見開いています。
中には片方の目は上に向き、もう一方は下を向けている
天地眼(てんちげん)をしているもののあります。
この意味は、全世界を見据えて、人々を見守っている意味があるのです。

左手には縄(なわ)のようなものを持っています。
これを羂索(けんじゃく)といい、煩悩を縛る働きを意味しています。
右手には垂直にたてて剣を持っています。

剣は文殊菩薩も持っていましたが、智慧(ちえ)の象徴です。
智慧を持って、人々の煩悩を打ち砕き、煩悩を去らせた後に、
仏の道に人々を導き、救済するのが、この不動明王
です。

如来には光背(こうはい)といって、身体の後ろに光が放たれていますが、
不動明王の場合は、焔(ほのお)が燃えているように全体を包んでいます。
この焔を火焔光(かえんこう)といいます。

おそらく如来と同じ悟りと救済力があるので、身体全体を包んでいるのです。

この仏は、想像の仏でなく、
昔、霊的な弟子が実際に見て、仏師に作らせたのだと推測しています。