仏事の心構え(109)
直葬 1
今月は「直葬―ちょくそう―」についてお話し致します。1回目です。
直葬というのは、通夜や葬儀なしで、火葬と納骨だけで取り行うものです。
極端にいえば、病院や老人ホームからそのまま火葬場に行き、
火葬場から墓地にいくことになります。
葬儀をしないので戒名もありせんし、
僧侶も呼ばないので、お経もありません。
まだ地方では、あまり目立って行われていませんが、
こんな形式がここ10年ほど東京では増えてきていて、
現在では葬儀全体の2〜3割にもなるといいます。(産経新聞 平成21年9月22日)
この原因はいくつもありますが、その一つに独居老人の増加があげられます。
昨年(平成20年)、65才以上の一人暮らしは、414万世帯あるそうです。
子供がいない人や、別居していて、親子関係が薄い人が増えているのが原因しているようです。
そんな老人が、立派な葬儀を考えるのは無理があるかもしれません。
独居老人の増えてきた原因は、家族の結び付きが薄れてきているからでしょう。
人間関係の希薄化です。
また経済的にも、亡くなった本人に、葬儀を出すほどのお金が蓄えられていれば、
独居老人であっても親戚のどなたかが面倒を見るかもしれませんが、
お金もなければ、葬儀も出せませんし、直葬を選ぶのも理解できます。
このような経済的理由で、直葬を選ぶ方も多いといいます。
中には、お骨の引き取り手もなく、理解あるお寺さんや葬儀社で預かっている例もあるようです。
葬儀代も出せない人の最期は、徳の薄さを、私は思います。
そして家族愛、家族の絆が薄れてきているのか、
別れの悲しみが見えなくなっているともいいます。
ペットでも亡くなると、別れがつらく涙がでます。
ですから別れの儀式をします。
でも、縁のある人の死が悲しみへとつながっていかないようです。
いくら親戚といっても、
一度も言葉を交わしたことのない人の葬儀には出たくないものです。
これも直葬の増える原因のようです。