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仏事の心構え(94)

法事 4 「形見分け」

先月は八月盆で、それについてのお話をいたしました。今月は元に戻り、7月の続きの法事について、4回目のお話をします。今回の法事は「形見分け」です。

形見分けとは、亡くなられた方の衣類や持っていたものを、身近な人に遺品として分けてあげることをいいます。葬儀が終わってしばらくし、落ち着いたところで行います。

四十九日の法要のときに遺品として分けるところもあります。形見分けをするものがない場合には、市販のものを使う場合もあります。

昔は死者の霊魂が、故人が着ていた衣類などに宿ると信じ、その衣類をいただくことで、故人を偲んだようです。さらには故人のものを頂くことで、死者の荒魂を鎮める意味もあると聞きます。

団子を分けるのも、悲しみを分かち合ったり、また故人の汚れを団子をいただくことで、多くの人が引き受けてくれる意味があるのですから、形見分けも、そんな意味を含んでいるのかもしれません。

なかには、故人の衣類をもらい、それを身につけると、故人の霊が乗り移って、不幸になると考える人もいますが、悲しみを分かち合い、徳を偲ぶ意味で、大事に扱うと考えたほうがよいでしょう

お坊さんの世界でも、師匠が亡くなると、その教えを受け継ぎ、後世に伝えていくという証しとして、師匠のつけていた衣や袈裟を頂きます。

そう考えると、形見分けも、故人の徳を受け継ぎ、故人が生前積んできた徳をたたえてあげ、自らも実践して、故人と同じように徳高く生きていくために、形見分けをしていただくとも考えられます。

「なきながらよい品えらぶ形見分け」と、人の心の内をうたった川柳がありました。形見分けならぬ遺産分けで、欲を出し、あたかも餓鬼が食べ物を奪い合うような、そんな形見分けもあると聞きます。

 多額の財産を前にすると、欲がふつふつと湧いてきて、正しい判断ができなくなるのが、悲しいかな、人の心です。そんな汚れた自分にならないよう、欲をおさえ、日頃から布施ができる生き方を心がけておくことが大切でしょう。