今月のことわざは「財を以て交わる者は 財尽きて交わり絶ゆ」です。
「ことわざ・名言辞典」(創元社)
このことわざは、財宝があるからと交際している人は、
その財宝が尽きた時、交際が絶えてしまうという意味です。
ある人が宝くじに当たって、大金を得た。
それを知った親戚や知人が、そのお金目当てにすりよってくる。
そんな話をよく聞きます。
このことわざで思い出すのは、芥川龍之介が書いた「杜子春」という小説です。
短編ではありますが、人の生き方をよくとらえていると思います。こんなお話です。
若くて貧しい杜子春がある門の下で立っていると、
ひとりの老人がやってきて、何故か黄金のありかを教えるのです。大金を手にした杜子春は、友達をよんで、お金を使いまくります。
やがてそのお金がなくなると、今まで親切にしてくれていた友だちが去っていくのです。もう一度老人が杜子春に大金のありかを教えます。
同じように友をよんで、お金を使うのです。
そしてなくなると同じように友は愛情もなく去っていきます。その老人に再び会った杜子春は、
老人が仙人であることを見抜き、弟子にしてくださいと頼みます。それならば、「これから何があっても、声を出してはならない」と言って、
峨眉山(がびざん)という山に連れていきます。そこでさまざまな魔性の者がでてきますが、一切声を出さないのです。
(少し物語を飛ばします)
地獄に堕ちた杜子春のところへ、閻魔大王が杜子春の両親連れて来て、
彼の前で、鬼たちに「打て。肉も骨もさいてしまえ」といい、
両親をめったうちにするのです。母は
「私たちはどうなってもいい。
お前さへ幸せになれるのなら、言いたくないことは黙っておいで」
と言います。すると何があっても声を出さなかった杜子春が
「お母さん!」と一声、叫んだのです。その声を発したとたん、元に世界のもどり、
目の前に現れた仙人が「とても、仙人にはなれないだろう」と言います。
杜子春は「なれません。これからは人間らしい、正直な暮しをします」と答えます。そして仙人は、一軒の家を与えます。
お金も大事ですが、正直な人間らしい生き方が優れているのです。
そこに人としての、本当の財を得ることができましょう。