今月のことわざは「布衣の交 ーふいのまじわりー」です。
{『ことわざ・名言辞典』(創元社)を参考}
意味は、
「貴い人と貧しい人が、上下の別なく親しく交際すること」
とあります。
別の本で調べてみると、
布衣とは布で作られた庶民の衣服を意味し、
そこから転じて無位無官の人びとや
庶民同士の付き合いを表すともあります。
ですから身分や地位にこだわらず、
心からの友情や信頼関係があることをいいます。
仕事には貴賤がないといいますが、
地位や身分にこだわっていると、
そんな仕事をしていると蔑む人がいる。
そんな場合もあります。
「おくりびと」という映画の中で、
納棺の仕事をしていた夫を
妻が「汚らわしい」と言った場面がでてきます。
この映画は『納棺夫日記』(文春文庫)という本を
題材にしていますが、この本を書いた青木新門さんも
実際に奥様に「汚らわしい。近づかないで!」と言われたと書いています。
その仕事を尊い仕事であるとは認めない。
そんな思いから出て来る言葉です。
私たち僧侶も、
「あの人たちは、死んだ人で食べている」
と言われることもあります。
こんな話がどこかの本に出ていました。
道を歩いていると、下水道工事をしている職人さんが、
汗を流して仕事をしていました。そこを通った子どもを連れた若い奥さんが、
働く現場を見て子どもに言いました。「あんな泥臭い仕事をしないように、
あなたはよく勉強して偉い人になるのよ」と。そこに別の子どもを連れた若い奥さん通り、
子どもに言いました。
「あの人たちのおかげで、美味しい水が飲めるの。
感謝しなくちゃね」と。
どちらが正しいか読者にお任せしますが、
後者の奥さんのほうが身分や地位にこだわらない
「布衣の交」を実行できている人でしょう。
ある独身の女性が清掃業を仕事としていて、
この仕事は恥ずかしい仕事ですかという相談をしました。
初対面の人に「仕事は何をしているのですか」と聞かれて、
「清掃業です」というと、見下されてあざ笑うかのような
態度を取られるというのです。
カウンセラーの女性が
「清掃業は誰もが快適に過ごせるよう整える役割があり、人を笑顔にする仕事。
その仕事に誇りを持ってほしい」
と。
多くの人が身分にかかわらず、
「布衣の交」ができればと思います。