法話

幸運と不運 2 幸運と不運の道

因果の道

そこで、幸運と不運の道を知っていれば、不運の道を行かないで、
幸運の道を歩いていけばいいことになります。

その道のひとつに、「因果の道」があります。
この表現は、どこにも出てきませんが、
善いことをすれば、善い結果が現れ、
悪いことをすれば悪い結果が現れるという法則です。

ですから、幸運の道を行きたいならば、
善の道を選び歩いていくことです。
悪の道は不運に遭い、不幸の多い人生になってしまいます。

自業自得という言葉がありますが、
自分がつくった善悪の報いを自分自身が受けるということです。
一般的には、悪い報いを受けるほうにとらえることが多いと思います。

お釈迦さまは、この因果についてこう説いています。

「その報(いはわたしには来ないだろう」
とおもって、悪を軽んずるな。

水が一滴ずつ滴りおちるならば、水瓶でもみたされる。
愚か者は、水を少しずつ集めるように悪を積むならば、
やがてわざわいにみたされる。

「その報いはわたしには来ないだろう」とおもっても、
善を軽んずるな。

水が一滴ずつ滴りおちるならば、水瓶でもみたされる。
気をつけている人は、水を少しずつでも集めるように善を積むならば、
やがて福徳にみたされる。

(『真理のことば 感興のことば』 中村元訳 岩波文庫)

小さな悪でも、「少しならいいや」と思ってしていると、
あたかもその小さな悪が一滴ずつ「心の水がめ」にたまっていくのです。
そしてやがて禍に遭うのです。

小さな善でも、「小さくてもいいから、善を積もう」と思い、行っていると、
心の水がめに一滴ずつ善のしずくがたまっていって、
やがて福徳という幸運に恵まれるのです。

善いにつけ、悪いにつけ、
この因果の道は誰にも避けて通ることはできません。
そう知っていれば、善なる道を行くのみです。

ワシとキツネ

イソップ寓話の中に「ワシとキツネ」というお話が載っています。

「ワシとキツネ」

ワシとキツネがとても仲良くなり、近くに住むようになりました。

ワシは大きな木の上に巣をつくり、
キツネはその木の下の根元の草むらを住みかにして、
お互い子が産まれました。

ところがキツネがエサを探している間に、
食べ物がなくて困っていたワシは、キツネのいないすきを狙って、
キツネの赤ちゃんをさらい食べてしまったのです。

帰ってきたキツネは、大いに悔しがったのですが、
高い木の上にいるワシには何もできません。

数日後のこと、神様への儀式としてヤギが焼かれているとき、
ワシは火のついたヤギの内臓を盗んで巣に持ち帰ったのです。

しかし、火のついた内臓が巣に燃えうつり
巣が火事になってしまったのです。
ワシのヒナは地面に落ち、キツネに食べられてしまったのです。

こんなお話です。

ワシがキツネの赤ちゃんを食べ、
キツネがワシのヒナを食べてしまったというお話です。

悪いことをすれば悪いことが起こるという、そんなお話です。
因果の悪い道を歩んだ結果です。

昨年の特殊詐欺の被害額が、最悪の721億円もあったそうです。
人を騙してお金をむしり取る。やがて悪の結果としての禍に遭うことでしょう。
閻魔様の怒りの顔が目に浮かびます。

人を思う善なる生き方

悪ではなく、善なる道を行けば、幸運が招き寄せられます。
そこにはあたたかな幸せの風が吹きぬけていきます。

「父の言葉 世代超えて伝わった」という投書を読んでみます。
76才の女性の投書です。

「父の言葉 世代超えて伝わった」

60年近く前の私の成人式。
日本全体がまだ貧しく振り袖を用意できない家庭も多かった。
母に振り袖をあつらえてもらえた私が父に言った。

「友達に『着物がないから成人式に出ない』って言う人がいるの。
そんなのって大人じゃないよね」

父は悲しい顔をして言った。

「そういうお友達に寄りそってあげられる人を大人と呼ぶんじゃあないかな。
君は振り袖を持っているという心の余裕があるんだから、
そのお友達と洋服で参加すれば? その人が居心地良く参加できるだろう」

目立ちがりやの私は、渋々受け入れた。
話を聞いた裕福な叔母が、朱色のスーツをあつらえてくれた。

私の娘が思春期になった時、父の言葉を伝えた。
娘は成人式に私が着るはずだった振り袖を着て行った。

その後、娘はある祝いの席に
晴れ着を用意できない友人に会わせてジーンズで参加した。
お父さん、あなたの言葉は確実に伝わっているよ。

(朝日新聞 令和7年1月12日付)

こんな投書です。

振り袖を着れない友人のために、洋服で参加すればいい。
その友人も居心地よく参加できるだろう。
そういうお父さんの言葉は、相手をおもいやる思いにあふれています。

この方の娘さんも、
晴れ着を用意できない友人のためにジーンズで参加したといいます。
この娘さん自身、相手をおもうやさしさがあります。

そんな生き方が、幸運を引き寄せ、不運をも幸運に変えていきます。
悪い思い、言葉、行いは、幸運を邪魔するもの。
善い思い、言葉、行いが幸運を招くのです。

(つづく)

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