学びを人のために
学びは自分の知識を広げ、心を養っていくところにあります。
その学びを自分の楽しみのためのみに使うのもひとつの生き方ですが、
できるならば、学びを他の人の幸せのために使っていくと、
自分の幸せをさらに高めていく人生になっていきます。
この「法愛」も今月で348号になります。
自分が学んでいかなくては、到底出せない量になってきています。
そのために、学び考え、考え学んできました。
まだ未熟で、人様のお役に立てるほどのことはしていませんが、
「壮にして学び、老いても学ぶ」という精神を捨てないでいます。
このお話をしたのは、平成28年のことで、
この年は東日本大震災から5年目になります。
この年の3月11日には政府追悼式が行われ、
「遺族代表の言葉」が新聞などに掲載されました。
この言葉を読んでみると、
みんな深い人生のことを学びながら、苦難を乗り越えている。
そんな印象を持ちます。
この時、遺族代表の言葉を述べたひとりに、
山本永都(ひさと)さんという(当時22歳)女性がおられました。
震災で、おじいさんとお父さんを亡くされ、
お父さんの遺体はまだ帰ってこないようです。
お父さんは消防団員として、防波堤の水門をしめにいって、
津波に遭ったのです。いかなければ助かったはずです。
山本さんは、震災当時は「水門を締めにいかなければ、助かったはず」
と母を問い詰めたようですが、今では住民を守ろうとした、
父を誇りに思っていると述べています。
そしてこの5年は、ずいぶん私を成長させてくれ、
住民の命を守った父の背中を胸に、いつか私も役に立てる人となり、
努力を惜しまず前に進んでいきたい。
それが亡き父への親孝行であると述べていました。
人生の苦難の学びが、
やがて人に役立つ人となっていきたいという彼女の決意には、
頭の下がる思いがします。
輝く一生
私は僧侶という仕事をしていますので、
亡き方と、その家族の最期の別れの時を何度も立ち会わせていただきます。
それがまた、私自身の人生の学びにつながっていくという、
有り難い体験をさせていただいています。
山谷美恵(仮名)さんが亡くなられたのは、49歳でした。
高校2の娘さんと中2の息子さんがいて、
亡くなる前の日に、一人ひとりに言葉を残し、
翌日の3時51分に、天のみ国へ旅立っていかれました。
看護師さんをしていたのですが、自分の異変に気がつかなかったようです。
それほど、家族のために、そして患者さんのために働いたのでしょう。
葬儀の終わりに、こんなお話を致しました。載せてみます。
ここに山谷美恵さんは49年の生涯を閉じられました。
今の時代、49年というのは、とても早い旅立ちです。
長生きをする人と比べれば、
まだこの世にやり残したことがたくさんあったでしょう。子どもさんの成長を願いながら、娘さんが嫁ぐ時のお嫁さんの姿、
凛々しい息子さんの社会人としての活躍、
夫婦共に語らい老後を過ごす日々、
みな綿雪が消えるように、幻となってしまいました。しかし、お釈迦様は説きます。
怠り怠けて、気力もなく、百年生きるよりは、
人のために努め励んで、一日生きるほうがすぐれている、と。美恵さんは妻や母をこなしながら、看護師として働いてきました。
病で苦しんでいる人の手を取り、癒してあげ、
安らぎを与えてあげることを仕事とし、その仕事に誇りを持ち、
自分のことよりも相手を思う気持ちを常に忘れず、生きてきました。この49年の生涯は、短くも見えますが、
本当は充実して、ダイヤモンドのように、輝いた一生であったと思います。
そんな生き方をたたえてあげ、そんな生きる姿勢を、
残された方も、自らの人生を重ね合わせ生きていくことが供養の大切な心構えです。そしてまた、この世に未練を残さないように、
仏様の世界へ帰っていかれることを念じてあげていただきたいと思います。家族のみなさんが美恵さんに託したメッセージです。
常に他の人の事を考え、自分の事は後回しにし、
自分がつらい時、「いたい」とか「しんどい」を言わず、
他の人のために行動する人でしたね。4年前からの抗がん剤治療で戦っている時でも、家族の心配をし、
相談にのってくれたり、頼れる存在でもありました。
仕事以外でも、看護師として白衣(びゃくえ)の天使でしたね。お母さんは、私の憧れの人でした。
看護師になるという夢ができたのも、お母さんが看護師だったからです。
仕事をしている時の姿は、本当に素敵だった。
いつも明るく笑顔を絶やすことがなかったお母さん。
ありがとう。お母さんの子で、とても幸せでした。お母さんを思い出すと、笑顔しかでてきません。
どんな時にも「前向き」で、「あきらめない」そんな人でした。
そんな生き方をわすれません。ありがとうお母さん。こんなメッセージを心に受け取り、今、天に帰っていくのです。
お別れはつらいことですが、無事花の咲く古里の温かな世界へ帰って、
天から私たちを見守ってくださいますよう念じて、お別れの拝礼を致します。
人生の学びが、やがて人の役立つことになっていき、
それがまた、自分の幸せでもあり、相手の幸せにもなっていきます。
いつまでも学ぶ道を、共に歩んでいきましょう。