法話

心の籠に花を摘む 5 心に摘んだ花を分けてあげる

人を支える仕事

この文章を書いているある朝のこと、
新聞の中に「週刊いな」(10月30日)という地方のことを
伝える新聞が広告と一緒に入っていました。
その表紙に笑顔の女性の写真が写っていて、爽やかな笑顔なので、
そこに掲載されていた記事を読んだのです。

この女性(44)はある病院で助産師をしていて、
なぜ助産師になったかが書かれていました。

看護師を目指して通っていた短期大学時代に、
病院実習で低体重児を出産した母親の担当になったというのです。
保育器越しにわが子を見つめる眼差しが本当に優しくて、
「こういう人たちを支える仕事をしたい」と思い、
卒業してさらに別の学校で一年、助産師の勉強をしたようです。
この仕事を続けて20年ほど。
辞めたいと思ったことは一度もないと書いていました。

「こういう人を支える仕事をしたい」という思いは、とても尊く思われます。
助産師の資格を得るために一生けん命学び、
そして人が幸せになってほしいという志を持ち、生きていく。
自らの心に摘み取った花を誰かのためにささげ使っていく。
そこに人としての尊さがあります。

忘れない優しい笑顔

最近、親が子を虐待する報道が目立ちます。
少し調べてみると、全国児童相談所の調べによると、
平成20年の相談者数は約4万2000件で、
平成29年になると約13万4000件に増えています。
この年、虐待で亡くなった子は49人だそうです。

わが子に優しい思いを分けてあげられる親が少なくなってきているのでしょうか。
心の籠に摘んだ優しい花を、まわりの人に分けてあげる、そんな生き方が問われます。

人は互いが支え合って生きていて、
相手に生き方を気づかされ互いが成長していきます。
ある投書を載せてみます。63才の女性です。
「友人の娘 優しい母の顔に」という題です。

「友人の娘 優しい母の顔に」

人ってこんなに変わるんだと思った。

友人の娘さんに10年ぶりに会った。

彼女は不登校や家出をくりかえす学校生活を送った。
友人は「あんな子は、初めからいらなかったのよ」と言い放っていた。

でも成人してから少しずつ変わっていき、やがて結婚。そして妊娠。
生まれてきた子は未熟児だった。

入院中、未熟児室で見た「忘れられない光景」を、
優しい母の顔で語ってくれた。

看護師さんから言われたそうだ。
「この子を救えるのは、お母さんの愛情だけです。
赤ちゃんの手を握って、声をかけてあげて。
赤ちゃんは小さな体で〝生きたいよ〟って必死に命の闘いをしているのよ」

その時涙が止まらなかったとか。
暖かい春の日、友人の娘さんから、感動をいっぱいもらった。

(読売新聞 平成19年4月3日付)

看護師さんの言葉が光っています。
その言葉を受けて、わが子にたくさんの愛情を注いであげる、
この友人の娘さんの姿勢が尊く思われます。
看護師さんを通して母が子へ愛を与える姿を最後にお話ししました。

このように人それぞれに心の籠に摘み取った尊い体験を活かして、
それを他の人の幸せのために使っていく。
そこに生き甲斐のある人生が得られ、さらには、
相手の幸せのためにしたことが、自らの喜びとなって返ってくるのです。

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