一つ一つ積み上げる
次に、徳を身につける方法を考えてみます。
まず考えられることは、毎日一生懸命働いて、給料をもらい、
日々の生活に当てた残りを貯金していくように、
日々地道に徳を積み重ねていくことです。
それには少しでも貯金して車を買おう家を建てようと思うように、
少しずつ徳を積み重ね、徳ある人になっていこうと思うことです。
積み重ねるで思い出すのは、
『百喩経』(ひゃくゆきょう)というお経の中にでてくるお話です。
昔、一人の愚か者が、お金持ちの立てた3階建の家を見て、
あんな3階建ての家がほしいと思った。そこで大工を呼んで、「あのような立派な3階建ての家を作ってほしい」と頼んだ。
大工はそこで土地を測量し、土や石を積み、土台を作り始めた。
愚かな男はそれを見て、
「私がほしいのは、一番上の3階だけだ。
1階も2階もいらん。早く3階だけ作れ」
と言った。
このようなお話です。
喩(たとえ)ですから、このなかに何か大事なことが示されているわけです。
考えられることは、家も測量し、土台を作って、
その上に1階、2階、3階と建てて、家が完成するわけです。
一つ一つ積み重ねて家が建つ。
同じように徳も、一つ一つ積み重ねていくことで、
徳ある人が出来上がっていくわけです。
徳ある人になりたいと思う
家を立てるには、家を建てたいと思わなくてはできません。
家を建てたいと思い、それには資金がいるので、
毎日の生活の無駄を省(はぶ)いて貯金をしていこうと思います。
同じように、徳ある人になろうとまず思って、事は始まるわけです。
このお話は喫茶店法話の会でお話ししたものをまとめていますが、
この喫茶店法話も、今年で15年目になります。
以前は辻説法という名称で9年ほどやりましたので、合わせて24年になります。
これも長く続けたいという思いがあるからこそできたのだと思います。
辻説法という名称で行っていたときの想い出ですが、
平成元年の1月28日のちょうどその日は大雪で、また辻説法の日でした。
スタッフ全員が、「こんな大雪では誰も来ないぞ」と言っていると、
時間までに10人ほどの人が来られたのです。24年間行っていて、最小人数です。
その時の講師は伊那市の常円寺の和尚様で、もう亡くなられてしまいましたが、
「よくみなさん、こんな大雪の日に来られましたね。ありがたい」
とお話を始められたのを、今でも鮮明に覚えています。
そんな苦難を乗り越え続けてこられたのは、
続けたいという強い思いがあったからだと思います。
徳も同じで、徳ある人になりたいと強く思うことが大切なわけです。繰り返しになりますが、もう一度、尊徳の「徳の姿」を書いておきます。
こんな人になりたいと思い、日々努力をしていくわけです。
1、父母の恩を忘れない
2、勤勉で、よく学び、人の道を知ろうとする
3、誠実で、人を思い、慈しみ深い
4、己に厳しく、足ることを知って、働くを惜しまない