徳の3つの特徴
次に徳の特徴について考えてみます。
特徴といっても少し分かりにくいかもしれません。
人でいえば、あの人の顔は丸いのが特徴であるとか、
背がとっても高いのが特徴であるといいます。
それと同じように考えてみて、徳の特徴について3つほど挙げてみます。
1つ目
徳は自ずと人にうつっていくということです。
徳ある人と一緒にいると、その徳に感化され、
自分もそうなりたいと思うようになります。
2つ目
徳は自らを輝かせ、他の人も輝かせて幸せにしていきます。
3つ目
徳は老いを知らず、死を知らず、ずっと生き続け、
人を正しい方向へと導いていく特徴があります。
この3つを順次考えていきましょう。
徳は人にうつっていく
たとえば頭の良い子がいて、この子はテストでいつも100点取るとします。
その子の隣に座って同じテストを受けたら、
その子の賢さがうつっていって100点取れるでしょうか。
おそらく取れないでしょう。
その子とは関係なく、自分で勉強しなければ100点は取れませんね。
あるいはお金持ちの方が公園のベンチに座っていた。
ときたま貧しい人が隣に座ってしばらく休んだ。
お金持ちの思いや姿がうつっていって、
貧しい人はお金持ちになれるでしょうか。なれません。
私は坊さんをしていますが、
話を聞いているみなさんは、決して坊さんにはなれません。
修行にいって、研修を受け、試験に受かって、やっと坊さんになれるわけです。
坊さんの隣に座っていて、坊さんの能力がうつっていって、自然にお経が読め、
坊さんになっていくなどできないことです。
でも、徳は違うのです。うつっていくのです。
香を焚くとその香りが服についてうつっていきます。
また、その服についた香りが、隣の人にもうつっていくことがあります。
それが徳の特徴なのです。
次の投書を読み、徳がうつっていく感じをつかみ取ってください。
16才の高校生の女の子の投書で、「親切を行動に移す勇気を」という題です。
バスに乗っていた時のことです。
バスが発車しようとしたところ、
「おい、ねえちゃん、忘れていったんじゃないか」
という男性の声が聞こえてきました。どうやら、誰かが忘れ物をしたらしいのです。
その男性は運転席まで行き、事情を説明しました。
そして、前を歩く落し主の後ろにバスをつけてもらい、前のドアから一言、「おうい、ねえちゃん」
その瞬間、誰からともなく、「いい人だ」という声がもれました。
その中には、「今どきの若者」と言われる人たちもいました。
彼らも決して心が冷めているわけではないのです。
バスを降りて落し物を女性に届けた後、
その男性は何事もなかったかのようにバスに戻ってきました。
バスは穏やかな雰囲気に包まれ走り出しました。
親切とは心の中で思っていても、なかなか実行に移せないものでしょう。
その男性は何の迷いもなく、すぐに行動しました。すごいと思いました。
心の中で思うだけでは相手に伝わりません。
私も勇気を持ちたいと思います。
読売新聞 平成元年2月9日付