正しい心には正しい結果が現れる
心の持ち方がその人自身を決めているというお話をしました。
そのために何が必要かというと、
心を正しく養っていくことが大切になってくるわけです。
心を養うために必要なひとつの考え方は、
原因結果の法則をよく知っているということです。
正しい心を持った人は、正しい結果が得られ、
悪なる心を持った人には、悪なる結果が現れるということです。
次の投書は、聴覚障害のある女子高生をアルバイトに採用し、
その結果得られた喜びの涙を上手に書いています。
正しく善い心、善い行為は、やがて善なる結果を招くのです。
64才の男性の方のものです。
10年ほど前、スーパーの店長をしていた時、
聴覚に障害を持った女子高生がアルバイトに応募してきた。接客業であることを理由に不採用を伝えたが、
翌日、彼女の叔母に、無給でもいいからと懇願された。その必死の思いにひかれ、私は採用を決めた。
彼女は小中学校でいじめに遭っていたという。
自分を成長させる経験にしたかったのだろう。高校を卒業するまで一生懸命働いてくれた。
8年が過ぎた今年、突然彼女から結婚式の招待状が届いた。
出掛けてみると、なんと主賓だった。私は涙ながらにあいさつをし、彼女も目に涙を浮かべながら話を聞いていた。
帰りの電車でも、私は流れる涙を抑えきれなかった。読売新聞 平成22年7月22日付
どんなあいさつをしたのか、聞きたかったという思いがわいてきます。
きっとアルバイトをした3年間、彼女も店長も大変だったでしょう。
でもお互いに理解し合い、彼女は聴覚障害を乗り越えて、
難しい接客業をこなしました。
その努力が、彼女を一人前の人として、また魅力的な女性に成長させたのです。
その結果、結婚という幸せを得たと思います。
また、「無給でもいいから」という叔母さんの必死の思いをくみ取ってあげた店長の
心の広さと、3年間、彼女を見守ってきた店長の善の思いが、
結婚式に呼んでもらって涙を流すという幸せに通じていきました。
この涙は何ものにも代えがたい幸せの涙です。
幸せいっぱいでも、涙が出るのですね。
正しい心で行ったことには正しい結果が現れるという、そんな投書です。
よく味わってほしいお話です。
縁を生かす
原因結果の間には縁というものがあります。
原因があって、何かの縁があり、結果がでてくるということです。
先ほどの投書では、女子高生の叔母さんの真剣なお願いという縁があって、
店長は彼女を採用したわけです。
この縁を知り、おそらく彼女は叔母さんに感謝の思いを抱いているでしょう。
そんな縁を大切にすることも、この原因結果の法則を上手に使う方法でもあります。
柳生家の家訓の中に、才の三段階として、
小才は、縁に出合って縁に気づかず
中才は、縁に気づいて縁を生かさず
大才は、袖すり合った縁をも生かす
こんな家訓があるようです。
縁をいかに生かすかということです。
自分をつくっていくためには、
縁で出会った人たちや、さまざまな出来事の中に、
いかに大切な縁があり、その縁に気づいて上手に使っていく人が、
また素晴らしい自分をつくっていける方法でもあるわけです。
昔大阪の人でしたが、この伊那の地で急に亡くなられた方がいらっしゃいました。
たまたま私のお寺と大阪のお寺さんとが同じ宗派なので、
私のところでお葬式をあげてくれないかというご依頼でした。
縁もゆかりもない人の葬儀なので、あまり気が進まなかったのですが、
承諾して枕経に行きました。
お経を読みながら、亡くなった方を見ていると、ふと思ったのです。
「この人とは縁もゆかりもないと思っていたけれど、
こんなふうに私がお経を読むというのは、何かの縁があるんだ。
そうであれば、心をこめて送ってあげなくては・・・」と。
そう思うと、私なりに誠実な思いがわいてきて、お経も心がこもったのです。
葬儀の最後の法話の中で、正直にこのことをお話し致しました。
私は初め葬儀を依頼されたとき、
何の縁もない方の葬儀で、少し大変な思いを持ちました。でも枕経のとき、お経をあげていると、
この方にこうしてお経をあげられるのは、何かの縁があってのこと。
ですから大切に送ってあげなくてはいけないと思ったのです。こうして今日このみ堂で、何人かのお坊さんが、
亡き人のために一生懸命お参りをさせていただきました。私たちよりももっと深い縁があって集ったみなさまならば、
もっと大切に亡き方を送ってあげなくてはならないと思います。どうぞ、み仏様のご加護を念じ、
心こめて浄土への旅立ちを共に祈ってあげましょう。
私としては袖すり合った見知らぬ人から、
誠実に送ってあげるという学びをいたしました。
そんな出会いと出来事のなかから、
人としての大事なものを学ばさせていただいたのです。
縁で深いのは、家族のみんなです。
最近家族の子育てにおいても介護においても、
その不和が報道されているのが目立ちます。
家族というのは、みんな縁あって結ばれた人たちですから、
互いに学び合って、その縁を生かしていくことがとても必要に思います。
自分をつくる 3 心の思いが自分をつくり世界をつくる
心に思っていることが自分自身で、
できればプラスの思いを常に抱いて、自分つくりをしていくことが大切です。
そしてこの一人ひとりの思いが重なり合って、家族ができ会社ができ、
また社会があるといえます。
家族でも、みんなが感謝を大切にし、
「ありがとう」の言葉を、日々忘れないで過ごせば、
その家庭は平和でほほえみをたたえた家庭になりましょう。
実際にそんなあたたかな家庭も多いのです。
ニュースでは悪なることの報道ばかりですが、
投書で紹介したような、心のあたたかな人がたくさんおられます。
おそらく投書に出てくる女子高生の家族も、
障害を持った女の子が生まれてずいぶん悩まれ苦労されたことでしょう。
その苦労を家族の和で克服され、結婚と言う幸せを手にしたのだと思います。
あるいは会社でいえば、
自分の会社を発展させようと思う人が7~8割いれば、
その会社は発展していく可能性が大きいでしょう。
そうではなくて、
ただ会社から給料をもらえばいいと思う人が7~8割いれば、
その会社の発展は望めないかもしれません。
この日本の国もそうです。
かつて戦争で悪いことをした、
だからこの国の人はみなダメな人で、近隣諸国に謝り続けなくてはならない
という人が5割を超えれば、この国は衰退していくでしょう。
そうではなくて、かつての戦争をいい学びとし、
この国をみんなが愛し、素晴らしい国にしていこうと思う人が5割を超えていけば、
よい国になっていくのです。
心でどう思い、心がどう働いているかをよく見定め、
自分をつくっていう必要があります。
そして、善なる人が一人でも多くなっていって、
家庭も社会もみな幸せになっていけることを、師走のこのとき、深く思います。