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みにミニ法話

(115)「ふるさとへ」

信仰のあつい80才になられた一女性が、亡くなる時に残した歌に、

ありがたや 楽しくかえる ふるさとへ

というのがありました。

これは、もう私は亡くなって死んでしまうのだけれど、今この世の長い旅路を終え、本来の私が帰る場所、ふるさとへかえることができる。なんて嬉しくありがたいことであろう。こんな意味になります。

この方の亡くなっていく境地は優れたものがあると思います。よく真理を学び、またあの世を信じる心の柔らかさをお持ちで、教えられるものがあります。

47才で亡くなられた鈴木章子(あやこ)さんという方がおられました。

ガンを告知されて、その思いをずっと文章にし、それが本になりました。亡くなって、この本が多くの方に読まれることを鈴木さんはふるさとの世界(浄土)で、きっと喜んでいることでしょう。

この本の中に「大いなる命のふるさとへかえる」という章があります。鈴木さんガンになり、そのガンと闘っている中に、父母が次々と亡くなっていくのです。

普通に考えると、不幸続きで大変だと思うのですが、鈴木さんは父母との別離の悲しみはあるのですが、父母がかえっていった大いなる命のふるさとに、電気がポッとついた感じがすると書いています。

そして「いつでもかえっておいで」という声が聞こえ、木を見ても川を見ても雲を見ても、その声が聞こえるという不思議な体験を書いています。

そしてまた、さまざまな人や物に守られているという充実感と、いつかまた父母と一緒になって大地を旅するのだ。
父母が亡くなった悲しみより、父母が、私のためにふるさとに明かりをつけてくれたのだ思われ、「父母の死は感謝の死でした」とも書いています。

鈴木さんもきっとふるさとの世界へかえっていき、そこでお父さん、お母さんとの再会をしたことでしょう。