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みにミニ法話

(111)「急ぐことはない」

5年ほど前に「たった15秒の一生」というお話(平成17年9月号)をしたことがありました。

この太陽系が銀河を回る時間を一宇宙というのですが、それを一年にすると、人の百年の生涯は、たった15秒になるということで、その15秒をどう生きるか、というお話でした。

人間の一生は終わってみれば短く、15秒のように思えるかもしれませんが、実際に生きている今を考えれば、長い道のりであるといえます。

家康は、「人の一生は重荷を背負って長い坂道を登るようなものだ」という意味のことを言っていますが、苦しみという荷を、何度も背負い、谷から谷へと運びながら、生きていかなくてはなりません。

時には、苦という荷を投げ出したくなるときもありますが、ゆっくり歩めばできないことはありません。要はあきらめないで、逃げないで、たんたんと我が道をゆくことです。

109才まで生きられた京都の清水寺の管主をしていた大西良慶という和尚さまがおられました。

何冊も本を書いていますが、そのなかに、こんな言葉があったので、色紙にかいて、床の間におき、何度もその言葉を繰り返し読み、自戒しています。

どうしても本当のものを作るには時間をかけなければならん。
悟りにしてもこれと同じようにいっぺんに悟ってはいかん。
自然に熟して甘くなるのが一番いい。
だから、急ぐことはいらん

悟りとは、真実の生き方ですから、それを自分のものにするために、苦という荷を背負うこともあるし、悲しみという荷を背負うこともあるわけです。

そんなさまざまな人生の出会いのなかで、急ぐことなく、しかもあきらめないで、真実の生き方を発見していくことは、人生の醍醐味ともいえます。

大宇宙からみれば人間の一生はたった15秒であって、カゲロウのような一生ですが、自分の人生をしっかり生きて、そこから発見した真実の生き方は、転生という時の流れの中で、永遠の光を放ち大切な宝となっていくのです。

急ぐことなく、今のこの時を大切に生きていきましょう。