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法華経の詩

法華経の詩(30)

譬喩品 第三(6)

世尊なる仏は
舎利弗(しゃりほつ)にさらに語っていう

一つの譬(たと)えを話した
この譬えには こんな真実が隠されているのだ

燃えさかっている家は
実は この世をたとえているのだ

この世は四苦といって
生老病死の苦しみと悲しみのために起こる 苦悩と

そう 後世この譬えは 法華七喩(ほっけしちゆ)の一つ
三車火宅(さんしゃかたく)の譬えとして
東の国まで広まっていくであろう

あるところに裕福で
多くの財を持った長者がいた
彼の家は大きく高く広く
そこには何百人という多くの人が住んでいたが
その家には入口が一つしかない

あるとき突然火が起こり 家に燃え広がった
この長者には何人かの子ども達がいた
彼自身はすばやく安全に燃えさかる家から
逃げ出すことができたが
彼の幼ない子は 燃えさから家の中で
火事とは知らないで遊び戯(たわむ)れている

長者である彼は
子ども達を抱きかかえて逃げるのもいいが
入口は一つだけしかない
しかも子ども達は走り回っている
そこで 子ども達よ 出ておいでこの家は燃えている
大火のために焼け死んでしまうよ
そう 子ども達に呼びかけた

しかし 子ども達は
燃え上がる火に焼け 死んでしまうことが
どういうことであるか知らない
あまりにも子ども達が幼稚であったからだ
そこで長者は 方便を使って叫んだ

この家の入口の外に
お前たちが日ごろ欲しがっていた車がある
牛の車 山羊の車 鹿の車だ
気に入った車を取りに そこから出ておいで

子ども達は その言葉を聞いて
燃えさかる家(火宅)から飛び出してきた