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お釈迦様の生涯

釈尊の願い(118)

イラスト・山中一正

鹿子母講堂―ろくしもこうどう―の寄進

布施の心は
その人の慈悲心の深さを現わすための
一つの目安といえるかもしれない
口ではどんなに良いことを言っていても
実際に布施することのできない人は
欲深な思いを心の内に隠しているといえよう

コーサラ国の首都サーヴァッティーの豪商の家に
嫁いで来たヴィサーカーという女性がいた
その家の姑にあたるミガーラは
彼女の結婚式のときに
息子夫婦の将来を祝福してもらうため
裸の姿で修行をしていた外教の人びとを招いて供養した

そして嫁のヴィサーカーにも外教の人びとに
礼拝することを勧めた
ヴィサーカーはすでに七才のときに仏陀の教えを聞き
その教えの意味を解して第一の悟りに達していた

驚いたヴィサーカーは
ミガーラのために仏陀の偉大であることや
教えの優れていることを説いた
ヴィサーカーの真摯で真剣な勧めで
一家全員が仏教の信徒になった
姑のミガーラは彼女が嫁であるにもかかわらず
仏陀への信仰に導いてくれたとし
ヴィサーカーを母のごとく尊敬したので
それを見たまわりの人は
彼女をミガーラの母、鹿子母と呼んだ

また彼女はサーヴァッティーの郊外に
鹿子母講堂という精舎を寄進した
城市の南方に祇園精舎があり
鹿子母講堂は東方にあったので東園とも言われた

お金のあるのに越したことはないが
お金を貯めるのよりも使う方が三倍も難しいという
お金の使い方は人の徳を現わすといえる
ヴィサーカーは精舎を布施しお金を使った

布施は慈悲心の現れである
悟り深いヴィサーカーが尊く光る