今月は「夜に口笛を吹かない」についてお話しいたします。
昔から「夜口笛を吹くと蛇(鬼)がくる」と言われていて、
私の子どものころ口笛を吹いて叱られたことがありました。
今ではあまり言わなくなったと思いますが。
蛇を好きな人はあまりいないと思います。
時々テレビなどで蛇を可愛がり首に巻いている人を見ますが、
信じられない世界のようにも思えます。
だいたいの人は心地よくないものとして感じています。
そんなものが夜に口笛を吹くと出て来るというのです。
特に平安時代の人は夜という闇は
魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界であると感じていました。
魑魅魍魎とは化けものです。
今でも真っ暗な夜は、あまり気持ちのいいものではありません。
神社などのお祭りで笛を吹いているのをよく見たことがあります。
これは涼やかな笛の音によって、神様が神界より降りてこられるようにと、
笛を吹くわけです。
人の口笛もそんな笛の音に似ていて、
何かを呼ぶ、そんな力があると思ったのです。
その呼ぶものが夜であれば、
人に危害を加える迷った霊や化け物の類(たぐい)と信じて、
夜は口笛を吹いてはいけないと戒めたわけです。
「耳なし芳一」という話があります。
源平の戦いで、平家一族と共に壇ノ浦に入水した安徳天皇と、
その平家一門を祀った阿弥陀寺というお寺に、芳一というびわ法師がいました。
目が不自由ではあったのですが、そのびわの弾き語りは優れたものがあったようです。ある日、人が訪ねてきて、ぜひそのびわの弾き語りを聞きたいというので、
その人についていきました。昨夜一晩、芳一がいないのを不思議に思った、その寺の和尚は、
芳一にどこへいったのかを尋ねましたが、芳一は何も言いません。その夜、そっと芳一の後をつけると、
安徳天皇のお墓の前で、びわの弾き語りをしています。和尚は亡霊に取り憑かれていると思い、
芳一の身体にお経文を書きましたが、耳だけ置き忘れたので、
夜迎えにきた亡霊が、耳だけ見えたので、
その耳をはぎ取って持っていってしまったというお話です。これは夜の事で、
亡霊を呼ぶような口笛は、夜吹かないほうがよいかもしれませんね。