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みにミニ法話

(221)「ほんとうの宝」

宝といえば、お金であったり宝石であったり、
家族や友達でもあるかもしれません。

しかし、豊かさの中で暮らしていると、
豊かさゆえに大切なものを見失ってしまうことがよくあります。

そんな日々の中で東日本大震災のような危機にあって、
財産や家族を失ってしまうような時、
ようやくほんとうの宝が見えてくるときがあります。

それは日常、常に持っているものなのです。
自分の命であったり、家族の語らいや笑顔、
平穏無事に暮らせる毎日であったりします。

人の煩悩は止まる所がないでの、
あたりまえでないことが、毎日繰り返し起こっていると、
それがあたりまえでないことに気づかなくなってしまうのです。

日々平穏に暮らしていることが、
ほんとうの宝であることを見失ってしまうのです。 宝は、日ごろの生活のなかにたくさんあるということを、
常日頃から見失わないよう、気をつけていくことが大切です。

そして、さらに気づく宝は、
「人のために働く」という生き方だと思われます。
その生き方が、人としてのほんとうの宝であると思えるのです。

今回の震災でも、
被災した人たちを救いたいという人びとはたくさんいました。
その助けたという思いが、何よりも代えがたい宝であると思います。

24才の遠藤未希さんが、結婚式を控えていたにも関わらず、
宮城県のある町の防災放送の担当をしていて、
最期まで「津波が来ます。避難してください」と何度も呼びかけ続け、
自らが津波に遭い、行方不明になってしまったことがありました。 その放送でどれだけの人が救われたことでしょう。 身命を賭(と)して、人のために放送し続けて、
おそらく、もう生きていないかもしれませんが、
その生き方、心根の優しさと強さが、ほんとうの宝であると思います。

そんな生き方が、亡くなったとしてもみ仏様の加護を経て、
ほんとうの宝が満ちる優しさの世界へ昇っていけるのだと思います。

今回の大震災で、世界の人びとの多くが、
「ほんとうの宝とは何か」に、気づいたことでしょう。