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みにミニ法話

(166)「さらさらと生きる」

さらさらとは、水が川を流れるとき、
石や木の根などに当たっても、上手にそれらをすり抜け、
止まることなく、淀(よど)みなく流れていくさまを表しています。

澄んだ水が小川をさらさらと流れて行くさまは、
清々しさを感じさせてくれます。

そんな水の流れる様子を、人はよく人生にたとえ
「あの水のように生きられたら」と考えたのです。

河(かわ)は人生で、
河のなかにある石や木の根は、この世の困難なことを表しています。
そして水がさらさらと石をすり抜けていくさまを、
自分が困難という石にぶつかっても、いつまでもそれにとらわれて苦しい思いをするのでなく、
いつかは過ぎ去っていくものと思い、その困難を受け入れながら、また押し流していく。

さらさら生きるとは、そんな心の持ち方を水の中に発見した言葉です。

病気になって苦しい。
そんなとき、さらさらと流れていく水のような境地になれたらと思う。
そうすれば、病気の苦しみも癒されていく。

老いる苦しみがある。
足腰が弱り、仕事もはかどらず、先行きも心配になる。
そんなとき、さらさと流れるような心境になれたら、どんなに楽なことかと思う。

河の中にある石や木の根は水の力で蹴散らすことはできません。
それを初めにどけようと思わないで、それに正面から当たって受け入れ、
その石を上手にすり抜けていく。

そのように、私たちも、老いや病、またさまざまな困難も避けることはできない。
そうまず悟り、水のように柔軟に、素直に、静かにその困難なことを受け入れ、
そしてさらさらと過去へ流していく。こう思うだけでも、苦しみが半減してくるのです。

「さらさらと生きる。さらさらと、さらさらと・・・」と、何度も口ずさんでいると、
いつのまにかそんな心境になって、苦しみをすり抜けていける、力がでてきます。

「さらさらと生きる」という言葉の力と、
水が石をすり抜けていくイメージを心に描くことで、
水がさらさらと流れていくような人生が展開していくのです。

そんな人の生き方を見て、まわりの人達はその人に清々しさを感じ、
また本人も心を毒さず、水のようにきれいな心境を保てるのだと思います。