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法話

積極思考の力 3 積極的な思いを使って生きる

先月は「さまざまな思いに翻弄されない」ということで、
マイナスの思いに、自分が惑わされず、常に積極的な思いを活かして生きていく
というお話を致しました。続きです。

どんなことでも、良い方へと考える習慣をつける

人には、その人に合った出来事が起こってきます。

その出来事をどのように受け止めていくかは、1人ひとりの自由です。
その出来事を自分の心を養うために使って行く人は、非凡な人です。

その出来事を不幸と思い、いつまでも悩み恨(うら)んでいると、
いつまでも不幸の穴から出ることはできません。

幸せをつかみ取るために、
この積極的な思いを上手に使っていく必要があります。

6つほど挙げてみましょう。

まず、「どんなことでも、良い方へと考える習慣をつける」ことです。

ひとつの出来事をプラスに見るか、マイナスに見るかで、
その出来事が全く違う出来事になっていきます。

プラスに見ていけば、そこに発展があり、
マイナスに取れば、その不幸を相手の人や環境、あるいは神仏のせいにして、
ますます幸せから遠ざかっていきます。7

ここで投書を読んで学んでみます。
15才の男性で、「先生になり誰かを助けたい」という題です。

僕はこの春、高校に入学し、新たなスタートを切りました。

僕には夢があります。
それは先生になることです。

この夢を持つようになったのは、
僕がこれまで多くの人に助けられてきたからです。

小学校のころは恩師に助けていただき、
中学生のときには、まじめすぎて力が入りすぎていた時期に、
友達に「頑張り過ぎんでええんやで」「少しは寄り道したらええんやで」
と言葉をかけられました。

そんなふうに、僕は多くに人に支えられ、
自分の道を明るく照らしてもらってきました。
みんなに助けられてきたからこそ今の僕があります。

これまで多くの人に助けられてきたからこそ、
次は僕が先生になり、誰かを助けたいと思います。

この夢を実現させるために、僕は多くの経験をし、
見識を高め、立ち止まらずゆっくりと歩き続けたいです。

(産経新聞 平成23年5月16日付)

読んでいて、今までの出来事をみんな良い方向へ取っているのが分かります。

それがまた、
「多くを経験し、見識を高め、立ち止まらずゆっくりと歩き続けたい」
という生き方に発展していっています。

物事を良い方へと捉(とら)えていくと、強く生きられるようになるのです。

この投書を悪い方へ取るとこうなります。

僕はこの春高校に入学しました。
でも夢をもてません。

小学校のころは、先生に認められず、
中学生のころは真面目に生きようと思っていても、
友達が「頑張らなくていい」と、僕の生き方を否定します。

誰も僕を理解してくれません。助けてくれません。

こんな人生は嫌です。
夢を持てと言われても無理です。

今は「どうして僕は生まれてきたのだろうか」と、
そんな疑問で押しつぶされそうです。

もし、このような思いでいたら、
物事を悪い方へと捉え、決して幸せにはなれません。

どうしてこの人と結婚したのだろう。
どうして私ばかり上手くいかないのだろう。
どうして病気ばかりするのだろう。
どうしてこんなに運が悪いのだろう。

そんな考えを捨て、
もっと積極的に良い方向へと考えていく癖(くせ)をつけるべきでしょう。

自分の良い所、相手の利点を見つける力をつける

2番目ですが、人はさまざまな見方をします。
心でどう思っているかで見方が違ってきます。

こんな短歌がありました。
女性の方の作品です。みます。

震災の後よりピアスをせぬ耳は飾らぬ言葉の多くを聴けり

(毎日新聞 平成23年5月1日付)

選者の米川先生の評は、
「飾りを外してこそ聞ける飾らぬ言葉。
被災地で看護師として働く作者だけでなく、多くの日本人が心のピアスを外した」
とあります。

東日本大震災前の家族の団らんと、
被災し、家族と離ればなれになったときの家族の見方は、
まったく違ったものになりました。

ティッシュペーパー1枚でも、
震災前と後とでは、その価値は違ったものに見えたはずです。

飾らない心で物事を見る時と、欲目や奢りの思いで物事を見る時とでは、
同じものでもまったく違ったものに見えるのです。

仏教に一水四見(いっすいしけん)という教えがあります。
1つの水なのに、見る者によってまったく違ったものに見えるという教えです。

水の中に住む魚、たとえばメダカにとって、
水の中は自分の住処(すみか)に見えます。

餓鬼にとっては、水なのに炎に見えるのです。

人にとって水が流れていれば川に見えるし、
コップにきれいなお水があれば飲み水と見る。

天にいらっしゃる菩薩にとっては、
流れる川の水がきらきら光るダイヤモンドのように見えるわけです。

ですから心の持ち方が大切で、いつも自分の中に良い点は何か、
相手の良い所はどのようなところかと、気づかって見ていけば、
菩薩が普通の川の水がきらきら光るダイヤモンドに見えるように、
自分の内にも相手の内にも良い点を発見できるようになります。

マイナスの言葉を使わない

3番目に「マイナスの言葉を使わない」ということです。
「だめだ」「できない」
「幸せになれない」「お金がない」「運が悪い」
などの、マイナスの言葉を使わないことです。

なぜかというと、思いは同じ思いを引き寄せるからです。

マイナスの思いは、マイナスの出来事を引き寄せてしまいます。
「不安だ、不安だ」といつも思っていると、そんな不安な出来事が集まってきます。

「お金がない」といつも言っていると、
お金のない状態が引き寄せられてくるのです。

本当かなと思い、以前「失敗する。失敗する」という思いで、
あることをしたことがあります。
結果は、失敗でした。

ですから、プラスの思いはプラスの事ごとを引き寄せるという法則に基づいて、
自分の守っているお寺は「必ず発展する。発展していく」と思い、長年勤めてきました。
結果は、成功を収めていると思っています。

生きていくなかでも、さまざまな困難があります。
そんな時にもマイナスの言葉を使わないで、プラスの言葉を使って乗り越える、
そんな詩を見つけました。

ある新聞の「朝の詩(うた)」に掲載されていた詩です。
56才の男性が書かれた詩です。

チャンス

辛い時には
神様を罵(ののし)りたく
なるけれど

苦しい時ほど
「神様ありがとう」と
神に感謝すれば
必ず運が変わって
幸運が舞い込んで来る

だから
辛く苦しい時は
人生の最大のチャンス
なのですね

(産経新聞 平成28年8月3日)

マイナスの言葉を使わないで、
プラスの言葉「神様ありがとう」と感謝すると書いています。
これが積極思考です。

このような言葉を使っていると、
辛い時は、人生の最大のチャンスだと思えるようになるのです。

平穏無事に過ごせるのは、大変ありがたいことですが、
人生、いつもそうはいきません。

耐えられないような苦しみや悲しみがいつかやってきます。
過ぎ去ってみれば、そんな時のほうが、人生の尊い考え方や生き方を学べるものです。

プラスの思いを持ち続ける

4番目に「プラスの思いを持ち続ける」ことです。

これは、「私はいつも幸せ」と、思い続けることですが、
少し違った観点から、考えてみます。

ワタナベ薫さんというメンタルコーチをしている方が、
『なぜかお金を引き寄せる女性39のルール』という本を出しています。

メンタルコーチって何だろうと思い、紹介のところを読んでみると
「美容、健康、メンタル、自己啓発、成功哲学など、
女性が内外面からキレイになる方法を、独自の目線で分析して配信しているメンタルコーチ」
とあります。

メンタルというのは心的、精神的という意味で、コーチは指導するという意味ですから、
精神的な面を指導する仕事をしている人ということです。

この本の中に、
小さな事柄に忠実な者は、大きな事柄にも忠実です。 とあります。

その後で、1億円は1円足りなくても1億円にならないのです。
この1円を大切にする気持ちが、お金に好かれる基本で、
1円を軽く扱う態度がお金に嫌われるものになるのです。

そう書いています。
その後で、こうも言っています。

出ていくお金は快く出すべきで、
もし、お金をしぶしぶ出して送っていたならば、
それもお金に嫌われる行為でしょう。
お金って基本、旅が好きだから。

とも言っています。

プラスの思いを持ち続けるのが積極思考ですが、
小さなことを蔑(ないがし)ろにしないことも、挙げられます。
小さなことを大切に行っていくことが、大きな成功につながっていくわけです。

「この1円が大きな仕事をする」とプラスに考え、
その小さな1円を無駄にしないということです。

先祖供養においても、
23回忌や27回忌はしなくていいだろうと思ってしまいますが、
その小さなことを粗末にすると、思いやりの心が薄れ、
家の繁栄を手放してしまう場合が多いといえます。

もう1つ挙げているのが、お金を送りだすときです。
せっかく汗を流していただいたお金だから、
支払いの時に、出し惜しみをしてしまうこともあります。

このお金が服に変わった、お金さんありがとうと送り出す。
このお金が食品に変わった。お金さんのおかげで、今日の食事ができる。
そう思ってお金を送り出すのです。

これもプラスの思い、積極思考の現れです。

すべてのものに、感謝の思いをそえる

5番目に「すべてのものに、感謝の思いをそえる」ということです。

感謝は幸運を呼び込む神様です。
自分がすること、そして人からされることにも感謝の思いをそえるのです。

先にお話した、お金を送り出すときにも、
そのお金様にありがとうの言葉をそえることです。

そうすると、お金様も、
「こんなに私を大事にしてくれる方なら、また戻ってきたい」
と思うものです。

旅行に行って親切な宿に泊まれば、
またこの宿に来たいと思うのに似ています。

感謝を込めると、仕事が丁寧(ていねい)になります。
感謝を込めると、物を粗末にしなくなります。
感謝を込めると、思いやりをそえることができます。
感謝を込めると、心が穏やかになります。
感謝を込めると、そこにほほえみがこぼれてきます。
感謝を込めると、美しい世界が見えてきます。
感謝を心に込めると、神仏の思いに近づいていき、
神仏の心が少し分かるようになってきます。

そしてさらに、感謝の思いを込めると、相手にその思いが必ず通じていきます。
感謝の思いを込めると、穏やかな思いが相手を幸せにしていきます。
感謝の思いを込めると、相手がほほえみに包まれます。
感謝の思いを込めると、幸せが引き寄せられ、
自分も相手も幸せになれ、幸せの輪が広がっていくのです。

自分が尊い存在とつながっていると確信する

最後に「自分が尊い存在とつながっていると確信する」ことです。

禅的には、心の中に仏と同じ尊い心があると信じることです。
その尊い心を仏心(ぶっしん)と言っています。

私たちは肉の塊(かたまり)として、この世に生まれてきたのではありません。
この精密に創られた肉体の中には、神仏の願いが込められているのです。

その思いはみな幸せになってほしいという思いです。

「みなさんは、この世の人生の中で、
それぞれの心の力に合った、さまざまな苦難に遭遇するでしょう。
その苦難にあっても忍耐を持って乗り越えて、自分自身で幸せをつかみ取ってください。
そのために、私(神仏)と同じ力を、あなた方の身体に宿らせているのですよ」
と教えています。

この神仏と同じ力のひとつに、積極思考の力があるのです。

今お話している「積極思考の力」の第1回に、ジェームズ・アレンの
「心は創造の達人です。私たちは心の中で考えた通りの人間になります」
という言葉を挙げました。 <

この心の力は神仏とつながっているからこそ得られる、生きる力です。

神仏から大きな力をいただいているのなら、
その力を上手に使って幸せになっていくのが、私たちの生きる責任でもあります。

どんな時でも積極的に考え、与えられた苦難を乗り越えて、
幸せを作りだしていきましょう。